不吉脳調不在@アクション成分エンプティにつき別ネタぶん投げの巻
うああ゛ー
正月から異様に不吉脳に傾いて驀進してたのですが、ここにきてぶっつり途切れた。
はしか下書きが終わったんで気が抜けちったらしく、何も手につかなくなったので急遽もう一個のネタをまとめてみた次第である。前なんか喚いてたベトナムのヤツな。
夏にはしかもベトナムも本の形にしたくてもはしかはもう下書き片付いたし確定だとしてよっしゃ次!次に手ぇ付けんぞ!みたいなことに、なった!そんな感じで不吉脳をお休みさせて変なアクションネタを平行して進めていきたい心持ちです。
ちょっと作成の順序前後しますがまたかよアイツみたいな生暖かい心持ちで身持って下さると、訓練されたMは喜んで踏まれに参上します。我々の業界ではご褒美です。
そんな感じで追記にベトナムでなんかドンパチやってるネタをあげておきます。
もともとは泥でぐりぐりいじくってたヤツなんだが、形になったので持ってきたよ。
久しぶりにCP関係ないネタ!とか思ったんだが赤い人が既に病気だったのでそうでもなかった。
それとなにげにゴエ先生がでばってる。すっげでばってます。謎の存在感に自分でも動揺しておる。
しかしジャッキー系アクションは本当に血肉だなあ。飛んだりはねたりギミックな戦い方を愛してやまない。
正月から異様に不吉脳に傾いて驀進してたのですが、ここにきてぶっつり途切れた。
はしか下書きが終わったんで気が抜けちったらしく、何も手につかなくなったので急遽もう一個のネタをまとめてみた次第である。前なんか喚いてたベトナムのヤツな。
夏にはしかもベトナムも本の形にしたくてもはしかはもう下書き片付いたし確定だとしてよっしゃ次!次に手ぇ付けんぞ!みたいなことに、なった!そんな感じで不吉脳をお休みさせて変なアクションネタを平行して進めていきたい心持ちです。
ちょっと作成の順序前後しますがまたかよアイツみたいな生暖かい心持ちで身持って下さると、訓練されたMは喜んで踏まれに参上します。我々の業界ではご褒美です。
そんな感じで追記にベトナムでなんかドンパチやってるネタをあげておきます。
もともとは泥でぐりぐりいじくってたヤツなんだが、形になったので持ってきたよ。
久しぶりにCP関係ないネタ!とか思ったんだが赤い人が既に病気だったのでそうでもなかった。
それとなにげにゴエ先生がでばってる。すっげでばってます。謎の存在感に自分でも動揺しておる。
しかしジャッキー系アクションは本当に血肉だなあ。飛んだりはねたりギミックな戦い方を愛してやまない。
以下ベトナム攻防戦ネタ タイトル決めないといかんのだがなんかいいもんないかなあ陽気なヤツがいい。
誤字があると思うのであとで直すです。見失っちまっただよ…どっかに笑えるミスがあったはず。
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突然ですがベトナムです。
ベトナム屈指の観光地であるホーチミンには、各所に屋台街が広がり、地元住人から観光客の胃袋を潤しております。
ちいさな移動式の屋台がそこかしこに溢れ、様々な香りと賑わいを見せています。
わいわいと行き交う観光客と、この土地に住み暮らす人たちの日常が交差する町の一角で、警部は屋台に前に無造作におかれたビールケースをひっくり返しただけの簡易な椅子に腰掛けておりました。
目の前におかれているのは、ベトナム名物の麺類である、フォー。
できたてのいい香りを立ち上らせる器の前で、警部は途方に暮れたような顔をしながら、菜箸のようなやたら長い箸を手に取り、ため息をつきました。
現在、警部の懐には愛銃のコルトも、使い倒されてされてボロボロになっていた警察手帳も手錠すらもありませんでした。
それら警察の根源である物資をすべて没収され、二週間の謹慎を言いつかってしまったのがつい二日前。
いつものようにルパンの予告に対抗すべく、部下を率いて指揮をとっていた警部でしたが、まんまと獲物を盗まれる失態となりました。
それがちょっと警察の威信に関わる問題に発展し、状況を収拾つかせるべく警視総監から2週間の自宅待機令が直々に出された訳です。
しかし、警部の事ですしルパンが現れたらすべてぶん投げて追いかけちまうって分かってたもんですから、
どっかから手に入れた格安のベトナムツアーのチケットを警部に握らせ、しばらく日本に帰って来んな、とばかりに飛行機に叩き込まれて現在に至ります。
ああー…なんだか分からねーうちにベトナムに来ちまったし、しかも指定された宿はすっげぇぼろくてシャワー水しかでねーし、俺ァここであと12日も何して暮らせばいいんだよォ…と、
もう一度でっかいため息をついた警部、しかし目の前のフォーは美味しそうです。現在の状況に不満は大有りですが食い物には罪はありません。取りあえず食べることにしました。
元来屈指の麺類好き、もちろんフォーだって大好物ですしなにより安いのが気に入ってます。
さーて食うか、と器を手に取りいざ実食、と箸を握りしめた、まさにそのときでした。
ドカーーン!という破壊音とともに、なにかが警部のいる屋台のすぐ横に吹っ飛んできました。
それは、勢いを殺す事なく警部が座っているビールケースと同じものが大量に積み重なっているところに突っ込み、がらがらと轟音をたててケースの山が崩れます。
もうもうと立ち上る砂埃と、ケースの残骸からにゅっと覗き出る2本の足。
な、なんだあ?と警部はフォーの器を持ったまま立ち上がると、同時にその2本の足の主もケースの中から身をガバリと起こしました。
ピヨピヨ頭の上に小鳥を舞い踊らせてあいたたたと頭とほっぺたを交互になでさすってるのは、見慣れた猿顔。
「ル、ルパン!?」
ブーッ!と思わず口に含んでたスープを噴出する警部。
その声を聞いてびくっと肩を振わせ、目が点になってる警部の方を振り返るルパン。
思わずびしっと警部を指差して
「あーーっ!」と叫んだ後、びょんとバネのようにケースの山の中から飛び上がって警部にタックルをかますへちま。
「とっっぁ゛ーん゛!!あ゛い゛だがっだーー!!」
と顔から出る汁全部出して抱きついてくる残念な人と、
両手に器抱えたまま万歳の体制でへちまにしがみつかれてにっちもさっちもいかなくなってる警部というあまり見た事がない構図が確立し、しばらく時が止まります。
「わ、わ、なんだ貴様ァ、たたた逮捕、あ」
ボーゼンとするのもつかの間、本能で警部は目の前の宿敵を取り押さえようと懐に片手を突っ込んだものの、そこには何もありません。
現在警部は謹慎の身。身分は一般人と変わりません。
しかしルパンは何事かをわめきながらしがみついてはなれないし、逮捕はできないしなんという状況。
仕方無いので一体何があったのかを聞こうとしたそのとき、突然ルパンが背後を勢いよく振り返りました。
それに釣られてその視線の方向を見やる警部。
そこには、3つの人影が佇んでおりました。
その個性といっていいのか謎の異質な風体に、思わずぎょっとする警部。
「お…おい…アレ」
「…そーいうことなのヨ…」
と小声で言葉を交わす2人。
3人は、明らかに周りの観光客からも地元住人からも浮いたオーラを纏っておりました。
見事にそろった、大・中・小の背丈の彼らは、一番小柄でいかにも中国四千年の歴史といった格好の男を先頭に、それぞれ武器をこれ見よがしに見せつけながらじりじりと近寄ってきます。
中くらいの、それでも190センチほどありそうな背丈に異様にひょろ長い腕が印象的な、見た感じサイコキラー風の男は刃先がいびつに湾曲した青龍刀を構え、
どこの世紀末覇王伝ですか、と問いたくなるような馬鹿でかいボディにありったけの筋肉をまとわりつかせた大男は、一撃で軽自動車くらいなら粉砕で来そうな巨大な牛刀を軽々と振り回してます。
しがみついたままのルパンをベリッと引きはがし、お前ェ、いったいなにをした!っと問う警部。
しかしへちまはわっかんね、わっかんねーもんよォとぷるぷる首を振るだけでした。
どうやらこの赤いのがなんかしてでかしてくれたおかげで、見事なまでに悪者でございという皆様方から命を狙われている事だけは良く良く理解しました。
だが俺を巻き込むな!!俺ァ今警官じゃねーんだ!!とわめく警部に、酷い!見捨てるなんてあんまりだぁ!タースケテェー!と縋るへちま。
そんな中、似非中国人が口を開きました。
それがまた〜アル、〜アルよ的な見事なまでに似非中国人しゃべりで、あいつぜってー名前珍か金だよな、とどうでもいい事を思う2人。
いわく、ルパンが盗み出したヴィジャヤ王朝の財宝の在処を示した秘伝書をよこせと言う訳です。
この3人は先祖代々その宝を追ってる組織の一員で、宝を手に入れる為ならどんな非道な事も厭わない残虐な性質の連中のようです。見たまんま悪者です。
ほれみろーやっぱ盗んでやがったじゃねーかこの盗人が、とコブラを決めつつ赤い人を罵る警部ですが、いやまじでしらねーんだって!マジで!ギブギブ!と窒息寸前になりながらも弁解するルパンさん。
話を全く聞いてない2人に珍(仮)は業を煮やし、お前ら2人ともまとめて始末してヤルね!と叫びました。
同時に地を蹴って突進してきたのは肉だるま世紀末男。
巨大な牛刀が振り下ろされ、ものすごい地響きとともに深々と地面に突き刺されます。
2人はとっさに左右に分かれて飛び退き、なんとか牛刀の露にならずに済みました。警部は相変わらず器抱えたままです。
問答無用か!だから俺関係ないっつーに!と毒づきながらも、しかし肉男はそれを理解するだけの懐の深さなど当然持っておりませんでしたので、しゃーなく赤い人とともに入り組んだ屋台街を激走するはめになる警部。
周りからも盛大に悲鳴が上がり、ぶん回される牛刀によって屋台が次々となぎ倒されていきます。
風を切って横なぎに牛刀が2人を襲います。それを2人息のあったジャンプでかわすも、牛刀によって突き崩された屋台のフルーツ棚が頭上に降り注ぎ、一瞬視界が果物で遮られます。
果物の海から顔をあげると、肉男が渾身の力で牛刀を振り下ろそうとしている姿が。
ドコン!と屋台がまっぷたつになりました。ついでに警部がずっと大事そうに持ってたフォーの器もぶった切られました。
あーーー!!と声をあげる警部。
「俺のフォーが!」
果物の山からヒィヒィとはい出し、口にりんごが挟まってるルパンがすごいスピードでりんごを食い散らかしてるときも、警部は怒りにうち震えてました。
肉男は、再び牛刀を振り下ろそうと鈍い刃先のそれをぐうっと持ち上げます。
わっわっにげよーぜとっつぁんときびすをかえそうとした赤い人でしたが、食いもんを粗末にするヤツぁゆるさねえと雄叫びあげて肉男に突進してく警部の後ろ姿を見て口に含んでいたりんごの残骸を噴出します。
鬼の形相で突っ込んでく警部、肉男の一撃を紙一重で避け、肉男の膝を台代わりに駆け上り、その勢いで高くジャンプし肉男の下あごを膝で思い切り蹴り上げます。
その一撃で脳震盪を起こした肉男、ぐるんと目を回転させそのまま頭から豪快にぶっ倒れます。
手から離れた重い牛刀が宙を回転し、肉男のすぐ横にドンと突き刺さりました。
警部、悠然と立ち上がってホコリを払いつつ、チクショーフォー代だって馬鹿にできねーんだぞこっちはと毒づきます。
散乱した果物の山から新しいりんごをちゃっかりと失敬し、しゃくしゃくしつつ駆け寄ってきた赤い人に「無茶すんない!」と咎められても、そもそもお前ェがこんな厄介な連中連れ込んだんだろ!そもそも次元や五右衛門たちはどうしたと逆に詰め寄られます。
そもそもなんでよりにもよって今ここベトナムにルパンがいるのかと。
言葉を濁す赤い人をギロリと眼力で従わせ、なにかの計画の下見の為この地によったという事、次元とは郊外のタンソンニャット国際空港で落ち合う予定だし、五右衛門はどっかに修行にでてて俺も居場所わかんね、という事をはかせる警部。
仲間の助けは期待できないし、しかも頼みの綱であったワルサーの弾数は、既に残り1ということも発覚し、ガックリ肩を落とす2人。
何でこんな時にアンタ銃携帯してねーんだよと半泣きで抗議されるも、そもそも誰のせいでこうなったと思ってるんだ!と頭に一撃食らわす警部でした。
しかし、のんきな事もしてられません。
肉男が撃破されたと知るや否や、今度は中型のサイコが満を持して躍り出ました。
ぎゃーぎゃーいがみ合ってる2人の頭上が、フ、と陰ります。
見上げるとそこには恐ろしい高さに跳躍した男の人影が。
ぎょっとして飛び退く2人でしたが、思った以上に長い青龍刀に服をかすめられ、反動で地面を転がります。
刃先がうすく作られている為か、びよびよと気味悪く波打つ刀を水平に構え、サイコはケケケとサイコらしい不気味な笑みを浮かべます。
うっわーコイツキテるわーとげんなりする2人でしたが、不規則な軌道を描いて振られる刀を何とかすべくなにか武器になるものかないかとあたりを見渡します。
ルパンさん、何を思ったのかそばの屋台にぶら下がっていた腸詰めを掴み、ヌンチャクのように構え
「フォアチャア!!」
と叫びます。
ブルースリーが乗り移ったかのように腸詰めヌンチャクを華麗に操り、びしっと構え直して
「行くぜぇ!」
と気合い充分。
奇声とともにサイコに向かってヌンチャクを繰り出します。
しかし所詮腸詰めなのであっさりぶった切られ、キレイに1cmスライスされた腸詰めを見つめながら、
「…行ったぜ」
と取りあえず頑張った的謎のアピールをするへちま。
アホか当然だ、とその辺の屋台で飯食ってた人の椅子を勝手に失敬した警部、振り下ろされる青龍刀の刃先を椅子で受け止めます。
上から横からの猛攻を椅子で巧みに受けつつも圧される警部。
しかし目の前の警部に気をとられていたサイコは、横からへちまが繰り出した不意打ちハイキックによりバランスを崩し、さらにだめ押しでもう一発回し蹴りを食らって吹っ飛びました。
ふーやれやれ片付いたと思ったのもつかの間、びょん、と勢い良くサイコはゾンビのように起き上がりました。
ヤバい薬でもキメて痛みを感じてないのか、ケケケと妙にテンション高く元気なご様子。
ゲェー!となった警部と赤い人、青龍刀とともに突進してきたサイコから逃げる為にうわああああと悲鳴を上げながら散り散りになってそれぞれ屋台街を走り出します。
そんな町の一角に、背中になにやら大量の荷物を風呂敷で包んで背負っている、見覚えのある和服姿が悠然と横切っていきました。
平和なはずの、晴天まぶしい昼下がりのホーチミン屋台街はいまや怒号と悲鳴が飛び交うとんでもない修羅場と化しておりました。
ふっとぶ野菜、なぎ倒される屋台、どさくさにまぎれて屋台から失敬したバインセオをむしゃむしゃ食ってる赤い人と、あ、てめ、俺の前で盗みだとぉと額に青筋たてて咎める警部、少し遅れて背後で奇声あげながらブンブン青龍刀ぶん回す変態。
周りの人は何がなんだか分かんないままギャーキャー悲鳴を上げて逃げ惑うばかりでした。
たまに後ろから繰り出される斬撃を飛んだり屈んだりとバリエーション豊かにかわしつつ、屋台街を縦横に走り回ってる2人でしたが、このまま延々逃げ回ってる訳にもいきません。
ああ、せめてなんか武器の1つもありゃ良かったんだけっどもなあ、と途方に暮れるへちまの目に、唐突に見覚えのある後ろ姿が横切っていきました。
同時に警部もそれに気がついたご様子。指差す視線の先には、間違いなくヤツが。
「…なあ…あれ…」
「…!!あんのヤロー!!」
そこには、どこから見ても周りから浮きに浮きまくってる時代錯誤も甚だしい帯剣の袴姿にご丁寧に笠まで装備した、あとついでに何だかやたら膨らんだ唐草の風呂敷包みを背負った五右衛門さんが、熱心に屋台で何やら果物の説明を受けているところでした。
これはまさに地獄に仏だ、先生一丁やってくんな、とばかりにルパン、五右衛門の横に近づきその場でタッタカと足踏みしつつ声をかけます。
が、先生ガン無視、めっちゃ無視。視線の先にあるとげとげが目立つ謎の果物に釘付けです。
ちょ、おま、仲間がピンチだっつーにちょっとくらい手ェ貸せよぉ!とわめくへちまに一言、
「観光中でござる!」
と高らかに宣言し、お買い上げのとげとげフルーツとともに、おお、仏像でござるな、これはなかなか見事な細工…と次の屋台に吸い込まれていきました。
うああんバーローぅ、このすっとこどっこい!もーいいおめーになんか頼まねーやい!と半泣きでじたばたするへちまに、サイコの横凪が襲いかかり、またも追いかけっこスタート。
うああーーこええーーとなりながらまたも警部の横に戻ってきた為、せっかく標的から外れたのに戻って来んな!責任とって何とかしろ一人で!とげしげし足蹴にされるへちま。
そこら辺にある木箱やらケースに詰まってた空き瓶やらをぶん投げてサイコに攻撃を試みるも、ヤツの驀進は止まりません。
ふと、前方の上方、路地を交差するように掲げてあった垂れ幕の上に、何やら小さい人影が。
珍(仮)が、袖口に両手を通した中華ポーズのまま垂れ幕の上に佇んでおります。
あーいたなーそういやコイツ、すっかり忘れてたわーと思うのもつかの間、今まで糸のように細かった珍(仮)の目がカッと見開かれました。
同時に袖に隠れていた両手が前に突き出され、カメハメ波のようなポーズを繰り出し、合わされた手の平の中央が一瞬光ります。
「破!」というかけ声とともに、警部とルパンの間になにか風圧を感じる波動が叩き付けられ、衝撃で地面がえぐれ吹き飛びました。
ボーゼンとなる2人。ブスブスとくすぶる地面と珍(仮)を交互にみて、人間が火を出すなァ!ジャンプじゃねーんだぞと良く分からない異議申し立てを敢行。
しかし中国の歴史をとくと見よとばかりに珍(仮)が謎の気功弾を次々と発射。
ところ構わずあらゆるものが吹っ飛び爆散する阿鼻叫喚な状況になりました。
砂埃が舞い、火柱が立ち上ります。
すっかりジャンプ的な状況に逃げ惑う人々と、その波に巻き込まれて右往左往する2人。
その間も珍(仮)のフィーバーは止まりません。
気合い充分な気功弾が建物に炸裂し、その衝撃で外壁が大きく崩れました。
それらがまさに降り注ごうとしている地点に、子供を抱えた女性の姿が。
いかん、と警部、ルパンの制止を振り切り弾かれたように瓦礫が降り注ぐ地点に突進します。
轟音と立ち上がり、砂埃が視界を0にしました。
突き飛ばされ、呆然としゃがみ込んでいるお母さんと子供。目の前には瓦礫の山が。
ガラガラと瓦礫が崩され、ホコリだらけになった警部が這い出てきました。
民間人の無事を確認し、ホッとしつつ、立ち上がろうとしたのですが、右足に激痛が走りました。先ほどの瓦礫に挟まれたらしく、派手に捻ったようです。
ああ、やっちまったか、と足のけがに気を取られていた警部、次の瞬間殺気を感じて反射的に身を翻します。
すぐ横にうなりをあげる青龍刀。サイコが相変わらずキメちゃった感満載のお顔で襲いかかってきました。
見せつけるかのように辺り構わず斬りつけて破壊活動を楽しむサイコ。
その振り回された青龍刀の軌道上に、ゴエ先生のやたら膨らんだ風呂敷がありました。
勢いのついた刃先が軽く風呂敷をかすめました。その衝撃でさっき買った仏像の頭の出っ張り部分が欠けました。
それに気づいた先生。ぶった切られた仏像の頭を見て、ガアアンとこの世の終わりのようなお顔になります。
そんなことはつゆ知らず、ブーンブーン青龍刀を唸らせながらじりじりと警部に躙り寄っていくサイコ。
こりゃまずい、と逃げ出そうとする警部ですが、足が鋭く痛みバランスを崩します。
その場に足をもつれさせ倒れ込み、その衝撃で転がった帽子を手に取ろうと右手を伸ばす警部。
その手のひらを珍(仮)に踏みにじられ、低く呻きます。
サイコに帽子を奪われ、あ、てめ、返せと身をよじろうとしたその顔のすぐ横に、青龍刀の刃先が突きつけられました。
警部の帽子をかぶったサイコ、ものすごいドヤ顔で警部を見下ろしてます。
あ、詰んだ…と警部。背中に冷たいものが流れました。
ルパンは前方に佇む人影を、感情を押し殺した視線で睨みつけていました。
そこには珍(仮)とサイコ、そして腕をねじ上げられ喉元に青龍刀を突きつけられた警部。
手こずらせてくれたアルね、と似非中国人全開で珍(仮)が勝ち宣言を行います。
警部、何とかしろォこんな所で死んだら化けるぞチクショーといろいろ喚きます。
しかしサイコの拘束はきつく、何より足やられてるため逃げ出すのは難しそう。
へちま、わかったとばかりに胸元から何やら折り畳まれた紙を取り出しました。
おめーらコレが目的なんだろ、とこれ見よがしに書面を高々と持ち上げます。
やっぱお前ェ盗んでたんじゃねーか!!とぎゃんぎゃん喚く警部をキレイに無視し、ルパンはとっつぁんを放せ、その代わりコイツはくれてやらぁと珍(仮)に取引を持ちかけます。
ならば、獲物を捨てて両手を上げてこちらまで近づいてくるアルよ、と返され、素直にワルサーをその辺におき、両手をあげようとするへちま。
緊迫した空気の中、後方からなにかが雄叫びをあげているのが聞こえてきました。
ドドドド、と響く足音。気合いの籠ったでゃああああというかけ声。
そしてそれは、力強く地面を蹴り宙を舞いました。一瞬逆行で姿が完全にシルエットと化します。
何事ぞ、誰もがそのシルエットの方向に視線を向けました。
そこにいたのは、怒りに我を忘れ斬鉄剣を振りかざし跳躍している先生の姿。
次の瞬間、閃光が走ります。
スタン、と地面に舞い降りた先生。その背後に棒立ちのサイコと珍の後ろ姿。
「仏像の、仇…」
と剣を鞘に納める先生。
キン、という音とともに、サイコと珍(仮)の衣類がみじん切りになって地面に落ち、ついでにサイコは髪の毛まで落ち丸坊主と化します。
警部の真横にぶっ倒れるサイコ。呆然としてる警部。アイヤー!と叫びあらわになった貧弱ボディを手で隠しつつ脱兎のごとく逃げ出す珍(仮)。
先生はその光景を振り返る事なくザッザッと渋い後ろ姿だけを見せつけながら風の中を去っていきました。
警部、これは一応礼をいうべきなの、か…?と首を傾げつつ、ヨロヨロと立ち上がります。
何か良くわかんねーけど、一応一件落着みたいだねえ、とへらへらしながら近寄ってきたルパンに、この大嘘つきが!!一発げんこつを食らわせながら憤慨する警部。
まあまあそれはおいといて、取りあえずどうしようか、と思案するルパンでしたが、またも後方から何から凄まじい音が聞こえてきたのでおそるおそる振り返りました。
そして警部と2人、抱き合ってギャー!と叫びます。
そこにはアジアの交通手段の1つである三輪タクシートゥクトゥクにみっしりと世紀末モヒカンみたいな悪者どもを詰んだ悪夢みたいな物体がこっちに猛突進して来るところでした。
トゥクトゥクの屋根の上に、いつ着替えたのか新しい中華服に身を包んだ珍(仮)が、逃がさないアルよー!!とか叫んでいます。
これはやべえ、と警部、その辺においてあった出前用とおぼしきカブにまたがりエンジンをかけます。
それを見たへちま、待ってぇと警部の肩の上に足を絡めてしがみつきました。
「ちょ、貴様ァ、降りんかい!」
「やだーーい!!」
と小競り合いをしつつ、カブはそのまま発車しました。
ブドドドと排気しつつ進むカブと、後ろから蛇行しながら追ってくる恐怖のトゥクトゥク。
距離がどんどん縮むも、しかしカブはもう限界いっぱいのスピードで疾走してます。
あわわあわわとなる2人、背後にばかり気を取られてカブが何かをパコンと弾き飛ばした事をうっかり見落としました。
急な斜面になった道をそのまま登っていくカブ。それを追っていくトゥクトゥク。
弾き飛ばされ、転がったのは工事用のコーンでした。
そして「工事中 立入り禁止」の表記も。
気がつくと、やたらだだっ広いハイウェイみたいなところを走っているカブ。
警部は前方の異変に気づきました。相変わらず後ろをあわわしながら見てるルパンに「おい」と声をかけます。
「なんよ」
「1つ気づいたことを言ってもいいか」
「だから…なんよ」
「落ち着いて聞けよ」
「だからぁ、なん…」
視線を背後から戻し、そこで前方の異様な光景にやっと気がつくへちま。思わずぎょっとして固まります。
「道が…ねぇんだが」
今は知ってる道は、未成道のハイウェイだったようです。未成道なのでところどころがまだ作ってる途中でした。
そして、目の前にはまだ対岸と繋がってない、ぽっかりと道が脱落してる地点がすごい勢いで接近してきました。
しかし背後はモヒカンの嵐。戻る事もできないままX地点に向かうカブ。
あわわしたままハンドルを握る警部に、へちま、何かを思いついたように声をかけます。
「とっつぁん!アレだ!アレ、持ってるだろ?」
「アレだあ?アレってお前…」
ふとぶつかる視線、ルパンの真剣な表情に警部、アレの意味を悟りました。
まさか、と警部、そっとコートの内側に手を差し入れます。
そこにある堅い感触を確かめ、「…保証はせんぞ」と告げる警部。
ヌフフー!と笑顔をうかべてみせるへちま。そして上半身を捻って背後に視線を合わせ、同時に胸元から何やらまるい物体を取り出しました。
それを握りしめ、そのままの格好で振り返る事なく言いました。
「信じるさ」と。
それを聞いた警部、口元だけ軽く笑みを浮かべます。
「なら、信じられてやらぁ!」
アクセルがグンと吹かされ、カブのスピードが上がりました。
ルパンが、手の中の物体を大きく振りかぶってトゥクトゥクめがけてぶん投げます。
そしてワルサーを構え、最後の一発が宙を舞うそれを撃ち抜きました。
ものすごい閃光がハイウェイを覆います。
あまりのまぶしさに、トゥクトゥクの連中も、屋根の上に立つ珍(仮)も完全に視界を失います。
一瞬の間をおいて瞳に色と風景が戻った彼らの目の前には、道がありませんでした。
そのまま奈落に向かって突っ込んでいくトゥクトゥク。そして爆音。
下からもうもうと黒煙が立ち上るハイウエイ。
未成道の対岸側の道から、下方に向かって一本の線が伸びていました。
そのロープにしがみついてる、警部とルパンの姿が見えます。
まったく…とため息をつく警部。
お前ェ、俺がアレを持ってなかったらどうするつもりだったんだ、と下の方でヒーヒーいってるへちまに問いかけます。
それを聞いたルパン、またもニカッと笑ってみせました。
「だってアンタが、アレ持ってないとか、考えられないじゃん」
対岸の、閉鎖ゲートが組まれている作の土台部分には、ロープが幾重にも絡まっていました。
そしてその最先端部分には、きらりと輝く十手が。
ケッ長年の腐れ縁の結果って奴かあと空をあおぐ警部。そりゃあなまじ何年も宿敵やってないっしょ、とかえすへちま。
やっと戻ってきたらしい平穏な時間にホッとしつつ、さてコレからどうやって下に降りるかなと思案を巡らそうとしたそのときでした。
ぷつん、と何やら不吉な音。
ぎょっとして、その音の方を見る2人。
それはロープが、今まさに力つきようとしている断末魔でした。
ちょ、ま、とあわてる2人の目の前で無情に分断されるロープ。
日常を取り戻したホーチミンの町に、2人分の悲鳴が響き渡りました。
ベトナム郊外の病院に、2人は担ぎ込まれておりました。
泥棒と刑事が仲良く両手両足を包帯でぐるんぐるんにされて並んで寝かされているという、妙な光景がそこにありました。
畜生、このままベッドの上で謹慎あけまでおねんねかよ!退院と同時に逮捕してやるぞォと息巻く警部と、
残念!俺っちのほうが若いから直るの早くて退院も先だもんねー!と返すルパン。
小規模な戦争が繰り広げられている最中に、病室のドアが開きました。
「御免」
と登場するは我らが五右衛門。相変わらず荷物を唐草風呂敷に包んでのご登場です。
それをみたへちま、ベッドを跳ね起き、おめーコノヤロウ、あん時はよっくもと噛み付きますが、先生華麗に無視して勝手にしゃべりだしました。
どうも、2人がハイウエイから落っこちて入院したと聞き、お見舞いにきたんだとか。
へえへえ、そいつはどうも、とジト目で未だに根に持ってるへちまと、それより先生の手の中にある物体が気になって仕方無い警部。
警部、おそるおそる切り出しました。その…手の中にある物体は一体なにか、と。
先生、実にいい笑顔でその物体を目の前に掲げました。
なんでも大変美味且つ日本では珍しい果物であるというのでお土産に買っておいたものである。見舞いに振る舞うにはふさわしいものであろう!
そう、揚々と語る先生の手の中にあったものは、件のとげとげいっぱいのフルーツ…ドリアン。
どれ、拙者が切り分けてやろうと斬鉄剣をすらりと抜く先生。
それをみて次に起こりえる惨事を正しく理解した警部とルパンは、声を揃えて叫びました。
「「わっわっやめ、ばか、よせッ…!」」
夕暮れをバックに、院内に響き渡る悲鳴と、ものすごい臭気、そして怒号。
ベトナムの一日はこうして更けていきました。
誤字があると思うのであとで直すです。見失っちまっただよ…どっかに笑えるミスがあったはず。
-----------------
突然ですがベトナムです。
ベトナム屈指の観光地であるホーチミンには、各所に屋台街が広がり、地元住人から観光客の胃袋を潤しております。
ちいさな移動式の屋台がそこかしこに溢れ、様々な香りと賑わいを見せています。
わいわいと行き交う観光客と、この土地に住み暮らす人たちの日常が交差する町の一角で、警部は屋台に前に無造作におかれたビールケースをひっくり返しただけの簡易な椅子に腰掛けておりました。
目の前におかれているのは、ベトナム名物の麺類である、フォー。
できたてのいい香りを立ち上らせる器の前で、警部は途方に暮れたような顔をしながら、菜箸のようなやたら長い箸を手に取り、ため息をつきました。
現在、警部の懐には愛銃のコルトも、使い倒されてされてボロボロになっていた警察手帳も手錠すらもありませんでした。
それら警察の根源である物資をすべて没収され、二週間の謹慎を言いつかってしまったのがつい二日前。
いつものようにルパンの予告に対抗すべく、部下を率いて指揮をとっていた警部でしたが、まんまと獲物を盗まれる失態となりました。
それがちょっと警察の威信に関わる問題に発展し、状況を収拾つかせるべく警視総監から2週間の自宅待機令が直々に出された訳です。
しかし、警部の事ですしルパンが現れたらすべてぶん投げて追いかけちまうって分かってたもんですから、
どっかから手に入れた格安のベトナムツアーのチケットを警部に握らせ、しばらく日本に帰って来んな、とばかりに飛行機に叩き込まれて現在に至ります。
ああー…なんだか分からねーうちにベトナムに来ちまったし、しかも指定された宿はすっげぇぼろくてシャワー水しかでねーし、俺ァここであと12日も何して暮らせばいいんだよォ…と、
もう一度でっかいため息をついた警部、しかし目の前のフォーは美味しそうです。現在の状況に不満は大有りですが食い物には罪はありません。取りあえず食べることにしました。
元来屈指の麺類好き、もちろんフォーだって大好物ですしなにより安いのが気に入ってます。
さーて食うか、と器を手に取りいざ実食、と箸を握りしめた、まさにそのときでした。
ドカーーン!という破壊音とともに、なにかが警部のいる屋台のすぐ横に吹っ飛んできました。
それは、勢いを殺す事なく警部が座っているビールケースと同じものが大量に積み重なっているところに突っ込み、がらがらと轟音をたててケースの山が崩れます。
もうもうと立ち上る砂埃と、ケースの残骸からにゅっと覗き出る2本の足。
な、なんだあ?と警部はフォーの器を持ったまま立ち上がると、同時にその2本の足の主もケースの中から身をガバリと起こしました。
ピヨピヨ頭の上に小鳥を舞い踊らせてあいたたたと頭とほっぺたを交互になでさすってるのは、見慣れた猿顔。
「ル、ルパン!?」
ブーッ!と思わず口に含んでたスープを噴出する警部。
その声を聞いてびくっと肩を振わせ、目が点になってる警部の方を振り返るルパン。
思わずびしっと警部を指差して
「あーーっ!」と叫んだ後、びょんとバネのようにケースの山の中から飛び上がって警部にタックルをかますへちま。
「とっっぁ゛ーん゛!!あ゛い゛だがっだーー!!」
と顔から出る汁全部出して抱きついてくる残念な人と、
両手に器抱えたまま万歳の体制でへちまにしがみつかれてにっちもさっちもいかなくなってる警部というあまり見た事がない構図が確立し、しばらく時が止まります。
「わ、わ、なんだ貴様ァ、たたた逮捕、あ」
ボーゼンとするのもつかの間、本能で警部は目の前の宿敵を取り押さえようと懐に片手を突っ込んだものの、そこには何もありません。
現在警部は謹慎の身。身分は一般人と変わりません。
しかしルパンは何事かをわめきながらしがみついてはなれないし、逮捕はできないしなんという状況。
仕方無いので一体何があったのかを聞こうとしたそのとき、突然ルパンが背後を勢いよく振り返りました。
それに釣られてその視線の方向を見やる警部。
そこには、3つの人影が佇んでおりました。
その個性といっていいのか謎の異質な風体に、思わずぎょっとする警部。
「お…おい…アレ」
「…そーいうことなのヨ…」
と小声で言葉を交わす2人。
3人は、明らかに周りの観光客からも地元住人からも浮いたオーラを纏っておりました。
見事にそろった、大・中・小の背丈の彼らは、一番小柄でいかにも中国四千年の歴史といった格好の男を先頭に、それぞれ武器をこれ見よがしに見せつけながらじりじりと近寄ってきます。
中くらいの、それでも190センチほどありそうな背丈に異様にひょろ長い腕が印象的な、見た感じサイコキラー風の男は刃先がいびつに湾曲した青龍刀を構え、
どこの世紀末覇王伝ですか、と問いたくなるような馬鹿でかいボディにありったけの筋肉をまとわりつかせた大男は、一撃で軽自動車くらいなら粉砕で来そうな巨大な牛刀を軽々と振り回してます。
しがみついたままのルパンをベリッと引きはがし、お前ェ、いったいなにをした!っと問う警部。
しかしへちまはわっかんね、わっかんねーもんよォとぷるぷる首を振るだけでした。
どうやらこの赤いのがなんかしてでかしてくれたおかげで、見事なまでに悪者でございという皆様方から命を狙われている事だけは良く良く理解しました。
だが俺を巻き込むな!!俺ァ今警官じゃねーんだ!!とわめく警部に、酷い!見捨てるなんてあんまりだぁ!タースケテェー!と縋るへちま。
そんな中、似非中国人が口を開きました。
それがまた〜アル、〜アルよ的な見事なまでに似非中国人しゃべりで、あいつぜってー名前珍か金だよな、とどうでもいい事を思う2人。
いわく、ルパンが盗み出したヴィジャヤ王朝の財宝の在処を示した秘伝書をよこせと言う訳です。
この3人は先祖代々その宝を追ってる組織の一員で、宝を手に入れる為ならどんな非道な事も厭わない残虐な性質の連中のようです。見たまんま悪者です。
ほれみろーやっぱ盗んでやがったじゃねーかこの盗人が、とコブラを決めつつ赤い人を罵る警部ですが、いやまじでしらねーんだって!マジで!ギブギブ!と窒息寸前になりながらも弁解するルパンさん。
話を全く聞いてない2人に珍(仮)は業を煮やし、お前ら2人ともまとめて始末してヤルね!と叫びました。
同時に地を蹴って突進してきたのは肉だるま世紀末男。
巨大な牛刀が振り下ろされ、ものすごい地響きとともに深々と地面に突き刺されます。
2人はとっさに左右に分かれて飛び退き、なんとか牛刀の露にならずに済みました。警部は相変わらず器抱えたままです。
問答無用か!だから俺関係ないっつーに!と毒づきながらも、しかし肉男はそれを理解するだけの懐の深さなど当然持っておりませんでしたので、しゃーなく赤い人とともに入り組んだ屋台街を激走するはめになる警部。
周りからも盛大に悲鳴が上がり、ぶん回される牛刀によって屋台が次々となぎ倒されていきます。
風を切って横なぎに牛刀が2人を襲います。それを2人息のあったジャンプでかわすも、牛刀によって突き崩された屋台のフルーツ棚が頭上に降り注ぎ、一瞬視界が果物で遮られます。
果物の海から顔をあげると、肉男が渾身の力で牛刀を振り下ろそうとしている姿が。
ドコン!と屋台がまっぷたつになりました。ついでに警部がずっと大事そうに持ってたフォーの器もぶった切られました。
あーーー!!と声をあげる警部。
「俺のフォーが!」
果物の山からヒィヒィとはい出し、口にりんごが挟まってるルパンがすごいスピードでりんごを食い散らかしてるときも、警部は怒りにうち震えてました。
肉男は、再び牛刀を振り下ろそうと鈍い刃先のそれをぐうっと持ち上げます。
わっわっにげよーぜとっつぁんときびすをかえそうとした赤い人でしたが、食いもんを粗末にするヤツぁゆるさねえと雄叫びあげて肉男に突進してく警部の後ろ姿を見て口に含んでいたりんごの残骸を噴出します。
鬼の形相で突っ込んでく警部、肉男の一撃を紙一重で避け、肉男の膝を台代わりに駆け上り、その勢いで高くジャンプし肉男の下あごを膝で思い切り蹴り上げます。
その一撃で脳震盪を起こした肉男、ぐるんと目を回転させそのまま頭から豪快にぶっ倒れます。
手から離れた重い牛刀が宙を回転し、肉男のすぐ横にドンと突き刺さりました。
警部、悠然と立ち上がってホコリを払いつつ、チクショーフォー代だって馬鹿にできねーんだぞこっちはと毒づきます。
散乱した果物の山から新しいりんごをちゃっかりと失敬し、しゃくしゃくしつつ駆け寄ってきた赤い人に「無茶すんない!」と咎められても、そもそもお前ェがこんな厄介な連中連れ込んだんだろ!そもそも次元や五右衛門たちはどうしたと逆に詰め寄られます。
そもそもなんでよりにもよって今ここベトナムにルパンがいるのかと。
言葉を濁す赤い人をギロリと眼力で従わせ、なにかの計画の下見の為この地によったという事、次元とは郊外のタンソンニャット国際空港で落ち合う予定だし、五右衛門はどっかに修行にでてて俺も居場所わかんね、という事をはかせる警部。
仲間の助けは期待できないし、しかも頼みの綱であったワルサーの弾数は、既に残り1ということも発覚し、ガックリ肩を落とす2人。
何でこんな時にアンタ銃携帯してねーんだよと半泣きで抗議されるも、そもそも誰のせいでこうなったと思ってるんだ!と頭に一撃食らわす警部でした。
しかし、のんきな事もしてられません。
肉男が撃破されたと知るや否や、今度は中型のサイコが満を持して躍り出ました。
ぎゃーぎゃーいがみ合ってる2人の頭上が、フ、と陰ります。
見上げるとそこには恐ろしい高さに跳躍した男の人影が。
ぎょっとして飛び退く2人でしたが、思った以上に長い青龍刀に服をかすめられ、反動で地面を転がります。
刃先がうすく作られている為か、びよびよと気味悪く波打つ刀を水平に構え、サイコはケケケとサイコらしい不気味な笑みを浮かべます。
うっわーコイツキテるわーとげんなりする2人でしたが、不規則な軌道を描いて振られる刀を何とかすべくなにか武器になるものかないかとあたりを見渡します。
ルパンさん、何を思ったのかそばの屋台にぶら下がっていた腸詰めを掴み、ヌンチャクのように構え
「フォアチャア!!」
と叫びます。
ブルースリーが乗り移ったかのように腸詰めヌンチャクを華麗に操り、びしっと構え直して
「行くぜぇ!」
と気合い充分。
奇声とともにサイコに向かってヌンチャクを繰り出します。
しかし所詮腸詰めなのであっさりぶった切られ、キレイに1cmスライスされた腸詰めを見つめながら、
「…行ったぜ」
と取りあえず頑張った的謎のアピールをするへちま。
アホか当然だ、とその辺の屋台で飯食ってた人の椅子を勝手に失敬した警部、振り下ろされる青龍刀の刃先を椅子で受け止めます。
上から横からの猛攻を椅子で巧みに受けつつも圧される警部。
しかし目の前の警部に気をとられていたサイコは、横からへちまが繰り出した不意打ちハイキックによりバランスを崩し、さらにだめ押しでもう一発回し蹴りを食らって吹っ飛びました。
ふーやれやれ片付いたと思ったのもつかの間、びょん、と勢い良くサイコはゾンビのように起き上がりました。
ヤバい薬でもキメて痛みを感じてないのか、ケケケと妙にテンション高く元気なご様子。
ゲェー!となった警部と赤い人、青龍刀とともに突進してきたサイコから逃げる為にうわああああと悲鳴を上げながら散り散りになってそれぞれ屋台街を走り出します。
そんな町の一角に、背中になにやら大量の荷物を風呂敷で包んで背負っている、見覚えのある和服姿が悠然と横切っていきました。
平和なはずの、晴天まぶしい昼下がりのホーチミン屋台街はいまや怒号と悲鳴が飛び交うとんでもない修羅場と化しておりました。
ふっとぶ野菜、なぎ倒される屋台、どさくさにまぎれて屋台から失敬したバインセオをむしゃむしゃ食ってる赤い人と、あ、てめ、俺の前で盗みだとぉと額に青筋たてて咎める警部、少し遅れて背後で奇声あげながらブンブン青龍刀ぶん回す変態。
周りの人は何がなんだか分かんないままギャーキャー悲鳴を上げて逃げ惑うばかりでした。
たまに後ろから繰り出される斬撃を飛んだり屈んだりとバリエーション豊かにかわしつつ、屋台街を縦横に走り回ってる2人でしたが、このまま延々逃げ回ってる訳にもいきません。
ああ、せめてなんか武器の1つもありゃ良かったんだけっどもなあ、と途方に暮れるへちまの目に、唐突に見覚えのある後ろ姿が横切っていきました。
同時に警部もそれに気がついたご様子。指差す視線の先には、間違いなくヤツが。
「…なあ…あれ…」
「…!!あんのヤロー!!」
そこには、どこから見ても周りから浮きに浮きまくってる時代錯誤も甚だしい帯剣の袴姿にご丁寧に笠まで装備した、あとついでに何だかやたら膨らんだ唐草の風呂敷包みを背負った五右衛門さんが、熱心に屋台で何やら果物の説明を受けているところでした。
これはまさに地獄に仏だ、先生一丁やってくんな、とばかりにルパン、五右衛門の横に近づきその場でタッタカと足踏みしつつ声をかけます。
が、先生ガン無視、めっちゃ無視。視線の先にあるとげとげが目立つ謎の果物に釘付けです。
ちょ、おま、仲間がピンチだっつーにちょっとくらい手ェ貸せよぉ!とわめくへちまに一言、
「観光中でござる!」
と高らかに宣言し、お買い上げのとげとげフルーツとともに、おお、仏像でござるな、これはなかなか見事な細工…と次の屋台に吸い込まれていきました。
うああんバーローぅ、このすっとこどっこい!もーいいおめーになんか頼まねーやい!と半泣きでじたばたするへちまに、サイコの横凪が襲いかかり、またも追いかけっこスタート。
うああーーこええーーとなりながらまたも警部の横に戻ってきた為、せっかく標的から外れたのに戻って来んな!責任とって何とかしろ一人で!とげしげし足蹴にされるへちま。
そこら辺にある木箱やらケースに詰まってた空き瓶やらをぶん投げてサイコに攻撃を試みるも、ヤツの驀進は止まりません。
ふと、前方の上方、路地を交差するように掲げてあった垂れ幕の上に、何やら小さい人影が。
珍(仮)が、袖口に両手を通した中華ポーズのまま垂れ幕の上に佇んでおります。
あーいたなーそういやコイツ、すっかり忘れてたわーと思うのもつかの間、今まで糸のように細かった珍(仮)の目がカッと見開かれました。
同時に袖に隠れていた両手が前に突き出され、カメハメ波のようなポーズを繰り出し、合わされた手の平の中央が一瞬光ります。
「破!」というかけ声とともに、警部とルパンの間になにか風圧を感じる波動が叩き付けられ、衝撃で地面がえぐれ吹き飛びました。
ボーゼンとなる2人。ブスブスとくすぶる地面と珍(仮)を交互にみて、人間が火を出すなァ!ジャンプじゃねーんだぞと良く分からない異議申し立てを敢行。
しかし中国の歴史をとくと見よとばかりに珍(仮)が謎の気功弾を次々と発射。
ところ構わずあらゆるものが吹っ飛び爆散する阿鼻叫喚な状況になりました。
砂埃が舞い、火柱が立ち上ります。
すっかりジャンプ的な状況に逃げ惑う人々と、その波に巻き込まれて右往左往する2人。
その間も珍(仮)のフィーバーは止まりません。
気合い充分な気功弾が建物に炸裂し、その衝撃で外壁が大きく崩れました。
それらがまさに降り注ごうとしている地点に、子供を抱えた女性の姿が。
いかん、と警部、ルパンの制止を振り切り弾かれたように瓦礫が降り注ぐ地点に突進します。
轟音と立ち上がり、砂埃が視界を0にしました。
突き飛ばされ、呆然としゃがみ込んでいるお母さんと子供。目の前には瓦礫の山が。
ガラガラと瓦礫が崩され、ホコリだらけになった警部が這い出てきました。
民間人の無事を確認し、ホッとしつつ、立ち上がろうとしたのですが、右足に激痛が走りました。先ほどの瓦礫に挟まれたらしく、派手に捻ったようです。
ああ、やっちまったか、と足のけがに気を取られていた警部、次の瞬間殺気を感じて反射的に身を翻します。
すぐ横にうなりをあげる青龍刀。サイコが相変わらずキメちゃった感満載のお顔で襲いかかってきました。
見せつけるかのように辺り構わず斬りつけて破壊活動を楽しむサイコ。
その振り回された青龍刀の軌道上に、ゴエ先生のやたら膨らんだ風呂敷がありました。
勢いのついた刃先が軽く風呂敷をかすめました。その衝撃でさっき買った仏像の頭の出っ張り部分が欠けました。
それに気づいた先生。ぶった切られた仏像の頭を見て、ガアアンとこの世の終わりのようなお顔になります。
そんなことはつゆ知らず、ブーンブーン青龍刀を唸らせながらじりじりと警部に躙り寄っていくサイコ。
こりゃまずい、と逃げ出そうとする警部ですが、足が鋭く痛みバランスを崩します。
その場に足をもつれさせ倒れ込み、その衝撃で転がった帽子を手に取ろうと右手を伸ばす警部。
その手のひらを珍(仮)に踏みにじられ、低く呻きます。
サイコに帽子を奪われ、あ、てめ、返せと身をよじろうとしたその顔のすぐ横に、青龍刀の刃先が突きつけられました。
警部の帽子をかぶったサイコ、ものすごいドヤ顔で警部を見下ろしてます。
あ、詰んだ…と警部。背中に冷たいものが流れました。
ルパンは前方に佇む人影を、感情を押し殺した視線で睨みつけていました。
そこには珍(仮)とサイコ、そして腕をねじ上げられ喉元に青龍刀を突きつけられた警部。
手こずらせてくれたアルね、と似非中国人全開で珍(仮)が勝ち宣言を行います。
警部、何とかしろォこんな所で死んだら化けるぞチクショーといろいろ喚きます。
しかしサイコの拘束はきつく、何より足やられてるため逃げ出すのは難しそう。
へちま、わかったとばかりに胸元から何やら折り畳まれた紙を取り出しました。
おめーらコレが目的なんだろ、とこれ見よがしに書面を高々と持ち上げます。
やっぱお前ェ盗んでたんじゃねーか!!とぎゃんぎゃん喚く警部をキレイに無視し、ルパンはとっつぁんを放せ、その代わりコイツはくれてやらぁと珍(仮)に取引を持ちかけます。
ならば、獲物を捨てて両手を上げてこちらまで近づいてくるアルよ、と返され、素直にワルサーをその辺におき、両手をあげようとするへちま。
緊迫した空気の中、後方からなにかが雄叫びをあげているのが聞こえてきました。
ドドドド、と響く足音。気合いの籠ったでゃああああというかけ声。
そしてそれは、力強く地面を蹴り宙を舞いました。一瞬逆行で姿が完全にシルエットと化します。
何事ぞ、誰もがそのシルエットの方向に視線を向けました。
そこにいたのは、怒りに我を忘れ斬鉄剣を振りかざし跳躍している先生の姿。
次の瞬間、閃光が走ります。
スタン、と地面に舞い降りた先生。その背後に棒立ちのサイコと珍の後ろ姿。
「仏像の、仇…」
と剣を鞘に納める先生。
キン、という音とともに、サイコと珍(仮)の衣類がみじん切りになって地面に落ち、ついでにサイコは髪の毛まで落ち丸坊主と化します。
警部の真横にぶっ倒れるサイコ。呆然としてる警部。アイヤー!と叫びあらわになった貧弱ボディを手で隠しつつ脱兎のごとく逃げ出す珍(仮)。
先生はその光景を振り返る事なくザッザッと渋い後ろ姿だけを見せつけながら風の中を去っていきました。
警部、これは一応礼をいうべきなの、か…?と首を傾げつつ、ヨロヨロと立ち上がります。
何か良くわかんねーけど、一応一件落着みたいだねえ、とへらへらしながら近寄ってきたルパンに、この大嘘つきが!!一発げんこつを食らわせながら憤慨する警部。
まあまあそれはおいといて、取りあえずどうしようか、と思案するルパンでしたが、またも後方から何から凄まじい音が聞こえてきたのでおそるおそる振り返りました。
そして警部と2人、抱き合ってギャー!と叫びます。
そこにはアジアの交通手段の1つである三輪タクシートゥクトゥクにみっしりと世紀末モヒカンみたいな悪者どもを詰んだ悪夢みたいな物体がこっちに猛突進して来るところでした。
トゥクトゥクの屋根の上に、いつ着替えたのか新しい中華服に身を包んだ珍(仮)が、逃がさないアルよー!!とか叫んでいます。
これはやべえ、と警部、その辺においてあった出前用とおぼしきカブにまたがりエンジンをかけます。
それを見たへちま、待ってぇと警部の肩の上に足を絡めてしがみつきました。
「ちょ、貴様ァ、降りんかい!」
「やだーーい!!」
と小競り合いをしつつ、カブはそのまま発車しました。
ブドドドと排気しつつ進むカブと、後ろから蛇行しながら追ってくる恐怖のトゥクトゥク。
距離がどんどん縮むも、しかしカブはもう限界いっぱいのスピードで疾走してます。
あわわあわわとなる2人、背後にばかり気を取られてカブが何かをパコンと弾き飛ばした事をうっかり見落としました。
急な斜面になった道をそのまま登っていくカブ。それを追っていくトゥクトゥク。
弾き飛ばされ、転がったのは工事用のコーンでした。
そして「工事中 立入り禁止」の表記も。
気がつくと、やたらだだっ広いハイウェイみたいなところを走っているカブ。
警部は前方の異変に気づきました。相変わらず後ろをあわわしながら見てるルパンに「おい」と声をかけます。
「なんよ」
「1つ気づいたことを言ってもいいか」
「だから…なんよ」
「落ち着いて聞けよ」
「だからぁ、なん…」
視線を背後から戻し、そこで前方の異様な光景にやっと気がつくへちま。思わずぎょっとして固まります。
「道が…ねぇんだが」
今は知ってる道は、未成道のハイウェイだったようです。未成道なのでところどころがまだ作ってる途中でした。
そして、目の前にはまだ対岸と繋がってない、ぽっかりと道が脱落してる地点がすごい勢いで接近してきました。
しかし背後はモヒカンの嵐。戻る事もできないままX地点に向かうカブ。
あわわしたままハンドルを握る警部に、へちま、何かを思いついたように声をかけます。
「とっつぁん!アレだ!アレ、持ってるだろ?」
「アレだあ?アレってお前…」
ふとぶつかる視線、ルパンの真剣な表情に警部、アレの意味を悟りました。
まさか、と警部、そっとコートの内側に手を差し入れます。
そこにある堅い感触を確かめ、「…保証はせんぞ」と告げる警部。
ヌフフー!と笑顔をうかべてみせるへちま。そして上半身を捻って背後に視線を合わせ、同時に胸元から何やらまるい物体を取り出しました。
それを握りしめ、そのままの格好で振り返る事なく言いました。
「信じるさ」と。
それを聞いた警部、口元だけ軽く笑みを浮かべます。
「なら、信じられてやらぁ!」
アクセルがグンと吹かされ、カブのスピードが上がりました。
ルパンが、手の中の物体を大きく振りかぶってトゥクトゥクめがけてぶん投げます。
そしてワルサーを構え、最後の一発が宙を舞うそれを撃ち抜きました。
ものすごい閃光がハイウェイを覆います。
あまりのまぶしさに、トゥクトゥクの連中も、屋根の上に立つ珍(仮)も完全に視界を失います。
一瞬の間をおいて瞳に色と風景が戻った彼らの目の前には、道がありませんでした。
そのまま奈落に向かって突っ込んでいくトゥクトゥク。そして爆音。
下からもうもうと黒煙が立ち上るハイウエイ。
未成道の対岸側の道から、下方に向かって一本の線が伸びていました。
そのロープにしがみついてる、警部とルパンの姿が見えます。
まったく…とため息をつく警部。
お前ェ、俺がアレを持ってなかったらどうするつもりだったんだ、と下の方でヒーヒーいってるへちまに問いかけます。
それを聞いたルパン、またもニカッと笑ってみせました。
「だってアンタが、アレ持ってないとか、考えられないじゃん」
対岸の、閉鎖ゲートが組まれている作の土台部分には、ロープが幾重にも絡まっていました。
そしてその最先端部分には、きらりと輝く十手が。
ケッ長年の腐れ縁の結果って奴かあと空をあおぐ警部。そりゃあなまじ何年も宿敵やってないっしょ、とかえすへちま。
やっと戻ってきたらしい平穏な時間にホッとしつつ、さてコレからどうやって下に降りるかなと思案を巡らそうとしたそのときでした。
ぷつん、と何やら不吉な音。
ぎょっとして、その音の方を見る2人。
それはロープが、今まさに力つきようとしている断末魔でした。
ちょ、ま、とあわてる2人の目の前で無情に分断されるロープ。
日常を取り戻したホーチミンの町に、2人分の悲鳴が響き渡りました。
ベトナム郊外の病院に、2人は担ぎ込まれておりました。
泥棒と刑事が仲良く両手両足を包帯でぐるんぐるんにされて並んで寝かされているという、妙な光景がそこにありました。
畜生、このままベッドの上で謹慎あけまでおねんねかよ!退院と同時に逮捕してやるぞォと息巻く警部と、
残念!俺っちのほうが若いから直るの早くて退院も先だもんねー!と返すルパン。
小規模な戦争が繰り広げられている最中に、病室のドアが開きました。
「御免」
と登場するは我らが五右衛門。相変わらず荷物を唐草風呂敷に包んでのご登場です。
それをみたへちま、ベッドを跳ね起き、おめーコノヤロウ、あん時はよっくもと噛み付きますが、先生華麗に無視して勝手にしゃべりだしました。
どうも、2人がハイウエイから落っこちて入院したと聞き、お見舞いにきたんだとか。
へえへえ、そいつはどうも、とジト目で未だに根に持ってるへちまと、それより先生の手の中にある物体が気になって仕方無い警部。
警部、おそるおそる切り出しました。その…手の中にある物体は一体なにか、と。
先生、実にいい笑顔でその物体を目の前に掲げました。
なんでも大変美味且つ日本では珍しい果物であるというのでお土産に買っておいたものである。見舞いに振る舞うにはふさわしいものであろう!
そう、揚々と語る先生の手の中にあったものは、件のとげとげいっぱいのフルーツ…ドリアン。
どれ、拙者が切り分けてやろうと斬鉄剣をすらりと抜く先生。
それをみて次に起こりえる惨事を正しく理解した警部とルパンは、声を揃えて叫びました。
「「わっわっやめ、ばか、よせッ…!」」
夕暮れをバックに、院内に響き渡る悲鳴と、ものすごい臭気、そして怒号。
ベトナムの一日はこうして更けていきました。
2012/03/06(Tue) 00:29:30 | ルパン三世系