殺伐フルボッコネタ第2ラウンド編(馬鹿長文)

さて6月に入って雨がふることが多くなってきたわけですよ。
梅雨はまだ入ってないの?それとももうとっくに入った?相変わらず四季折々のあらゆる行事からお天気情報までを把握できない羽虫生活です。
ちょっと無駄に健康診断引っかかっちまったからもう少し太陽浴びる生活を行おうと思い、
早速週末から自分の生活は真人間だぜ!朝おきて夜寝るぜ!と携帯アラームを早速7時半とかにセット。
いざ睡眠!と勇んで眠ったところ、起きたら余裕で正午回ってた。完璧な羽虫ですグスン。

いつもの羽虫前ふり劇場はおいといて、本日の本題です。最初に言う、不吉すぎる長文が追記に控えてるので注意!
さて今日は前回の不吉長文を自分のためになんとか収拾つけようとしばらく無駄に悩む日々でしたことよ。
女王に赤い人を正気にしてやってくれと要請を受け、つくづく読み返してみたら本気で末期な話になってる気がするので、うん、これはまずい大変よくないとわたくし反省し、
出来れば来週つか月曜日から普通の運営に戻さねばならぬ、なんでここ数日こんなに不吉に沸き立ってしまったのか自分でも分からない事態発生に脳内レッドアラームですどうしたー!自分どうしたー!
まあ、外道なのでたまにこういう発作が今後も起きるんだろうけどその際「まただぜこの羽虫!」と指差して笑っていただければこれ幸い。
で、またもや全体的に赤い不穏な絵まで描いてるあたり、どうにも不吉フィーバーは例年になく直球勝負に出たようです。
でもなんとなく気になって去年の今頃のログとか漁ってみたんだけど、
うん、何のことはない去年も余裕で不吉な事やってた!つーか3月からずっと不吉な事してた!と大変分かりやすい結果に本当に頭丸めて出家しようかとおもった泣
半年に1度くらいなんかくるみたいだよ。
-----------
拍手お返事をこんなところで!

>6/4に拍手を下さった方
なんといいますか、うっかり己の爛れた部分を全力で解き放った結果がこれでございます。
え、えろ!?という評価に多大に挙動不審になっている自分ですが、もしアレとかソレが気に入っていただけましたらのしつけて差し上げる次第です!
ついでに下のメルヘン絵もお持ち帰りいただけてうれしゅうございますv
さらに調子こいた大長文も今回の記事の下にぶら下がっているので、よ、よかったらこれも…!
先日のお礼の一端になるのであればもう自分なんでも描くという、ちょっと誰か!な状況に嬉々として陥っている次第です笑
最近はどうにも滾って仕方ないのでたまにどこかで発散しつつ
不穏なものを貼り付けていけたらと目論んでおりますウーフーフ!
コメントありがとうございましたv

>6/6に拍手を下さった方
やったー!と拳を固める羽虫です。
ちょっと特殊だという自覚があるのですが、目覚めていただけたらもはやソウルメイツ様です。ようこそこちらの国へ!笑
でも今回殺伐だけではどうにも収まりがよくなかったので補足文を急遽作成しました。多分本編の2倍くらいの容量です笑
お時間ありましたら読んでいただけたらうれしいですv

その他、ナイショモードの方々、メッセでかまってくださる方々、拍手押してくれる方に感謝ですー!ウフー!







さてこのバナーの登場です。
今回はさすがにピンクも必要だということで、割とBL要素があると思っていただけたらこれ幸い!
相変わらず赤い人が壊れてて警部が不憫です。そろそろ自分警部に絞殺されても文句言えない。
フルボッコだなんだと不吉な要素しか入ってないので、そういう不穏な分野がだめな方は回避推奨です。
本当は泥に放り込みたかったなあと思いつつ、しかし内容的には前回のほうが魔境だったのでまあ良いかとこっちにおいてみたよ。
そのうち文章整形して絵も足したら泥にまとめて放り込みたいところ。
ついでに下のロックとワイリー様の妄想も絵を足したいので泥に入れておきます。


というわけで妄想ゾーンです。
前回、一方的にルパンさんによる攻撃に警部がノックアウトした状態だったわけですが
今回は結果的に警部の反撃KO勝ちという感じになりましたなぜか。
やっぱりルパンさんは警部に勝てないんだよ精神的に!と自分の脳内で謎の号令が発動したのでちょっと本能に従ってネタをぐるんぐるん回しまくった結果、
なんか変な練成をされたらしく、妙にメルヘンで少女マンガなラストになった気がする。
こうやってたまにネタをガーーーッとだしたくなる発作があるんですが、こういうネタ出した後悲しい事に必ず形にしたくなる性質なのでたぶん漫画にするんだろうなあと思ったわけですが、
この内容を自分が書くのかとか思うともうそれだけで死ねるから困る。
そんなわけで残念な妄想第2ラウンドです。
お時間あるときにどうぞ。無駄に長いから!

以下妄想リターンズ
----------------

「あの日」から数ヶ月は何事もなく過ぎていきました。
毎週のようにルパンさんから警視庁に予告上が届き、警部と部下や突撃隊の皆様は狙われた品々の警備に当たり、
そしていつものように追いかけっこをするのが日課でした。
そのときのルパンさんはごくごく普通で、いつものように憎たらしい笑みを浮かべながらアーバヨ!とっつぁん!とやっているわけです。
警部もあのときの経験がまだ心の奥に傷にはなっていたものの、それでもいつもと変わりないルパンさんの後姿をみてこっそりと安堵しているわけです。
あれは、ただの気まぐれか何かで特に意味はなかったんだと。
そう結論付ける事で警部は自分の任務を全うすることができたのです。
喉の傷もすっかり癒え、もともと長く思いつめて悩むような性質ではなかった警部でしたから、気持ちの切り替えも早かった。
過去は過去、今は今!と割り切れるからこそ、こんなに長い事ルパンさんみたいなモンスターを追う事ができたわけです。
そして周りの部下や突撃隊連中も、普段のような豪快かつ元気な警部に戻ったところをみて皆一様に安堵感に包まれていました。
一時期のあの思いつめた険しい顔は、彼らにとっても心配の種だったのです。
そして仕事が終わってから、同僚たちが警部に声をかけました。
たまには飲みにいかないか、と。
そのときたまたま時間が空いていた警部は快諾し、久しぶりに赤提灯のお店で楽しい時間を過ごしました。
こんなに笑ったの久しぶりかも知れねえな。
ほろ酔い気分に滞在先のアパートに向かった警部。
その後姿を苦虫を噛み潰したような顔で見送る影がありました。
ルパンさんでした。
すっかり過去と割り切れた警部とは対照的に、ルパンさんはずっと「あの日」から何かが心にくすぶったままずっと悶々としていました。
あのとき、完全に警部を屈服させたときに体感した、良い様もない幸福感は決して長くは続きませんでした。
むしろそれは日を追うごとに焦燥感と化していき、その結果普段よりも短いスパンで予告状を送りつけるに至っていたのです。
警部に会いたい、そして何よりも自分だけを見つめて追って来る警部の姿を見たいから。
あんなひどい目にあわせておいて、それでも何事もなかったかのように自分を追って来てくれる警部を確認して安心したかったのです。
それは、自分自身に「大丈夫、俺はとっつぁんにきらわれてないもん」と言い聞かせるような、傍から見れば滑稽なことでもありました。
あれだけ警部に無体を働き、力で押さえつけて得た満足と引き換えに彼は余裕を完全に失っていたのです。
気がつけば屈服してしまったのは自分のほうだったんじゃないかと錯覚するくらいに、警部のことばかり考えるというもう末期状態。
あの時、警部の喉に食らいついた感触や完全に怯えて震える警部の姿、そして「あの言葉」を何度も脳内再生させるも、このどうしようもない「渇き」のような焦燥感は止まりません。
でも格好つけなこの人は、そんな焦りを微塵も顔に出さずに予告状を送りつけては盗みを繰り返していたわけです。
そんなわけで数ヶ月は何とか頑張ってこれたルパンさんでしたが、ここにきて決定打を与えられる憂き目にあいました。
それが先ほどの赤提灯。
警部は、自分には決して見せないような笑顔で同僚や部下の皆様と酒を酌み交わしていたわけです。
常に笑みを絶やさず、時には大笑いしたりと大変に楽しそう。
それを見たルパンさんの心に、再び黒い炎が立ち上りました。

---なんで、こんな奴らの前ではそんな顔が出来るんだ?

無邪気に笑っている警部の横顔を射るような視線でにらむ赤い人。
自分は毎日訳のわからない焦燥感で思い悩んでいるというのに、当の警部は「あの日」の恐怖などすっかり忘れたかのように陽気に部下と晩酌してる。なんという不公平!許さん!
そして何よりもこの行き所のない苛立ちは警部を囲む部下や、いつも背後に控えている突撃隊連中に集中します。
そもそもなんでこいつらはいつもとっつぁんの傍にいて、一緒に笑ってられるンだ?
そりゃ職場一緒だしという全くもって当然な理屈は、すでに冷静さを失い1匹の獣と化した赤い人には通じません。
そして恐ろしい結論を、彼は自らの脳内にはじき出しました。

---あいつの後ろには誰もいなくて良い

そして、そんな取るに足りない連中に無防備に笑顔を振りまいている警部自身にも怒りの矛先が向けられました。
そしてルパンさんは決心します。
今度こそ完全に屈服させて自分のものにしてやる、と。

*  *  *

警部は愕然とその場に突っ立っていました。
足元の芝生の上には薄く水が張られ、歩を進めるためにパシャパシャと軽く跳ね上がります。
視線の先には折り重なるように倒れ付した突撃隊員の姿。
そして、撃たれたのか体を丸めて蹲る同僚や部下たちの姿。
高い塀の上でもみ合う人影。
銃声。
塀から落ちてくる部下。
そしてただ一人、塀の上で悠然と立つ赤い色。
警部は搾り出すようにその名を呼びました。
ルパン、と。
この日も、いつものように予告のあった美術館で警備をしていた警部とその仲間たち。
時間通りに赤い人が姿を見せ、派手な捕り物状態になりました。
右へ左へ逃げまくる赤い影を追い、館内を走り回る警部たち。
建物から外へ飛び出したルパンさんを追い、隊員の一部が彼の後を追いました。
そして高い塀に進路を阻まれたルパンさん、あっという間に突撃隊員たちに囲まれます。
しかし、それこそルパンさんの思う壺でした。
上空に向かって一発。ルパンさんの発砲です。
それと同時に隊員の皆様の体に電流が走り抜けました。
打ち抜かれた電線が、あらかじめ水びだしにしておいた芝生の上に落ちて放電したのです。
巨大なスタンガンのようになった芝生の上に、隊員たちはひとたまりもありませんでした。
そのままなすすべもなくその場にぶっ倒れます。
騒ぎを聞きつけやってきた警部の部下たちを片っ端から狙撃していくルパンさん。
そしてそれらが一通り終了したジャストタイミングで警部がこの場にやってきました。
まだ空気の中に放電した電流の臭いが鼻をつく、美術館の庭。
警部は、目の前の死屍累々状態を信じられないという面持ちで見つめていました。
いままで、一度だってコイツがこんな無体な事を自分の目の前でやった事はなかった。
貴様は確かに悪党だが、無用な殺生はしないはずじゃなかったのか?
それなのに今、目の前の光景は一体なんだ?
膝がガクガクと笑いそうになるのをなんとか持ちこたえる警部。動揺を隠す事はできません。
そんな血相を変えた警部に向かい、なんとも気の抜けた声で声をかけるルパンさん。

「ヨォーとっつぁん、遅かったなー遅かったからなんか、もうほとんど全部片付いちまったっけっどもナ」

そんな、お使いから帰って来ましたーレベルの言い草にカッとなった警部、思わずホルスターからコルトを引き抜いてルパンさんに銃口を向けました。
そして、懇親の力をこめて叫びました。

「そいつらに手を出すな!さもなきゃ貴様を、撃つ!」

動揺からか、それとも恐怖からなのか、銃を持つ手が小刻みに震えるのが分かりました。
というのもそのはず、このときのルパンさんから立ち上るオーラは「あの日」のものと寸分変わらなかったから。
反射的に喉に痛みを覚え、警部は一歩後ずさりします。
ルパンさんの表情は、塀の向こう側で煌々と照らされているサーチライトの明かりで逆光となり、見る事ができません。
それでも彼が発する刺すような悪意で、警部は自分に向けられた恐ろしいまでの「殺意」を感じ取りました。
塀の上の影がゆっくりと動きました。
す、と音も立てずに地面に舞い降りるルパンさん。
警部は思い出しました。これじゃあ「あの日」の始まりとなんら変わりないじゃねえか、と。
しかしここでひるむわけにはいきません。
こちらにむかって来る影に向かい、再び銃を構えます。

---なあルパン、お前ェどうしちまったんだ?

心の中でかつての宿敵に向かって声をかけるも、目の前の獣はそんな事は意に介さずゆっくりと歩み寄ってきます。
そんなルパンさんの姿に、警部は激しく怒りを感じました。
信じていた。
どこかでこの男を一人の人間として信じていた自分がいた。
長い間培ってきた時間は、警部とルパンさんの間に確かに一種の「信頼関係」を築いていました。
たくさんひどい目にも合わされたし、何度も苦い思いをさせられた。
でも、それでもコイツはどこかフェアな戦いを自分にたいして行っていた。
好敵手として認め合い、そしてたまに背を預けあって戦いを乗り切った事もある。
警官としては不適切だが、それでも自分は確かにこの男を信頼していたのだ。
それが今、完膚なまでに叩き壊されたと思いました。
警部は叫びました。

「俺は、貴様を許さねえ!」

それを聞き、ぴたりとルパンさんの歩みが止まります。
警部はそこで初めて、ルパンさんの顔を見る事ができました。
見た事のないような顔をしていました。
それは、怒りと悲しみが入り混じったような、泣き出しそうな子どものような顔。
何かを伝えようと、わずかに口が動きました。
しかしそれは一瞬で消え、それを覆い隠すかのように口角が三日月型を描きます。
邪悪としか良いようのないその笑顔に、警部はぞくりと体を震わせます。

---あの時と、同じだ…

銃を構えたまま、しかしその体はまるで金縛りにあったかのように動かなくなった事に肝を冷やす警部。
ルパンさんは笑いながら、更に近づいてきました。
その瞳は真っ暗で、何の光も映していません。
それが禍々しさに拍車をかけ、警部の背中に冷たいものを走らせました。
そしてゆっくりと立ち止まります。
生暖かい風が二人の間を通り抜けていきます。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのはルパンさんでした。

「なあ、アンタにとってこいつらの命ってそんなに大切?」

憎憎しげに、倒れ付す隊員の一人を小突いて仰向かせ、胸倉を掴んで引きずり上げます。

「こんな役立たずな連中に囲まれてご満悦たァ、アンタもたかが知れるよナ」

やめろ、と警部は引きつった声で叫びました。
宙吊りになった隊員は意識はなく、たまに体を小刻みに痙攣させています。
もう一度警部は、やめろと小さく叫びました。
それを聞き、あからさまに不愉快そうに顔をゆがめるルパンさん。
隊員の体をぼろきれのように放り出します。
そして言いました。

「そんなにこいつら大事ならサ、取引でもしようか」

こいつら、どいつもまだとどめは刺しちゃいねぇ。
ルパンさんは愕然とする警部をよそに続けます。
感電させた連中も、あえて急所をはずして撃った連中も、今すぐ病院に行けば助かるだろう。

「命くらいは見逃してやっても良いさ。アンタが取引に応じるならな」

ルパンさんは喉の奥でクックと笑いました。
再び警部に向かって歩み寄ります。
警部は足がその場に縫い付けられたかのように微動だに出来ずにいました。

「で、取引の内容は、アンタ自身」

すぐ目の前に、見慣れた赤いスーツが立ちふさがります。
ふ、と膝から力が抜け、警部はその場に跪きました。
コルトが手から落ち、水没した芝生の中に沈みます。
わずかに震える警部の顎を掴み、上を向かせるルパンさん。

「悪くねえ取引だろ?アンタが俺に少しばかり付き合ってくれればこいつら皆、助かるんだもん」

唐突な言葉に、警部の目が大きく見開かれました。
体に刻まれていた恐怖の記憶がフラッシュバックし、思わず身震いをします。

「ま、嫌なら目の前でお仲間の皆さんが一人ずつ消えていくわけですが。どうします?ねえ、銭形警部?」

わざと皮肉な口調で良いながら、しかしその目は本気以外の何物でもない赤い人。
警部は、自分の中にどうしようもない絶望感と無力感を感じました。

またか。
また俺はコイツに屈しなければならないのか。

でもほかに方法がありません。
自分がもしここでこの男の機嫌を損ねてしまえば、迷わず彼は足元に倒れる人間たちを一人残らず物言わぬ塊に変えるでしょう。

だめだ。
それだけはだめだ。
自分以外の誰にも危害は加えさせられねぇ。

警部は、再び覚悟を決めました。
にこにこと冷酷に笑う目の前の影を悔しそうに見つめ、唇を噛み締め、そしてぎゅっと目を瞑りました。
そして、消え入りそうな声で言いました。

「好きに、しろ…」と。

*  *  *

前髪を鷲掴みにされ、頭皮が吊る痛みに警部はふと意識を取り戻しました。
とたんに体中に鈍い痛みと口内に広がる鉄の味に思わずむせます。
見覚えのあるこの部屋に連れ込まれ、両腕をロープで天井から吊るされる羽目になった警部、しかしそれでも目の前で無表情のまま自分をいたぶる男をにらみつけていました。
それがとにかく面白くなかったルパンさん、やたらめったらに拳を振るいまくりました。
おかしいと感じました。
どうしてなんだろうと思いました。
「あの日」はこうやって、警部を痛めつけていたときには言い様のない喜びみたいなものを覚えていたはずなのに。
どうして今はただただ苛立ちしか感じないんだろう。
こめかみ周辺をしたたかに殴られ、その衝撃で意識を飛ばした警部の姿を見つめながら、ルパンさんはまだびりびりと痺れが残る自分の拳を握り締めました。

---チクショウ、なんだよどうしてなんだよ

「あの日」と同じことを繰り返しているはずなのにどうして俺の「渇き」は癒えないんだ?
訳の分からない焦りは増す一方で、その事実がルパンさんの冷静さをますます削っていきます。
静まり返った室内の沈黙に耐え切れず、気絶した警部をたたき起こすと胸倉を力任せに引きずり上げます。
そして警部の髪を掴み、自分のほうへ向けさせました。
まだ意識がはっきりしない警部の視線が宙をさまよい、自分に向けられていない事に恐ろしいまでの焦燥感を感じていたのです。
警部は、自分がまるでサンドバッグか何かのように吊るされて存分にぶん殴られている今の状況に困惑し、そして無遠慮に自分の胸倉掴んで顔を覗き込んでくる赤い人に対して憤りを感じました。

「さわ…るな!」

髪を引っ張られる不快感から、警部はかすれた声で抗議の意を表明。
それと同時に頬に衝撃を感じました。
唇の端がざっくり切れたのか、一筋の赤いラインが顎まで刻まれます。
ああくそ、いっテェなと思う間もなく、再び髪をグラップされる警部。
苛立ちと、それを無理やり覆い隠そうと貼り付けた笑顔が入り混じった凶悪な顔をしたルパンさんが、どこか興奮したような口調で言いました。

「あーらら、忘れちゃった?アンタの今の状況をサ」

「あの日」と同じなんだよ。
あの時同様にアンタは無力に俺の手の内に転がっているだけなのさ。
まるでその事実を自分に言い聞かせるかのようにルパンさんは言いました。
警部は悔しそうに顔をしかめます。
その現実は、吊られた腕の引きつった痛みが雄弁に物語っていました。
今はただ、コイツが気が済むまで殴られるしかねえのか。
そう思うと、なぜか胸の奥にチリッとした痛みが走るのです。
その痛みがどうしても警部の中で消える事がありません。
それを見ないふりをするかのように、警部は自分を冷酷に見下ろす黒い瞳に向かって懇親の力で睨み返しました。
そのとき、わずかではありましたが、何も写していなかったルパンさんの瞳の中に揺らぎが走ったかのように見えました。
事実、にらみつけられた事で彼は明らかに動揺していました。
心の中が跳ね上がるような衝撃を感じ、思わず息が止まりそうになりました。
そんな動揺を表に出すまいと必死になりつつ、ルパンさんは苛立ち混じりの声をあげました。

「アンタさあ、もっと頭使ったらどうなのヨ。もう少し素直になるとかしたほうがお利口さんだと思うんだけど」

これ以上傷増やしたくないデショ?と警部のネクタイを掴み上げてぐいぐい首を締め上げます。
げほごほしながらも、それでもいまだににらむ事をやめない警部。
それがどうしても気に食わない、むしろ「怖い」とすら感じました。

「それとも、もっと「躾」が必要?なら俺、本当に容赦しないよ?」

さらにネクタイを締め上げながら、ルパンさんは言います。
その顔はもはや余裕は微塵もなく、視線合わせたら即死しそうなほどに怒りとも殺意ともつかないオーラがだだ漏れでした。
そんな禍々しい気迫にもひるむことなく、警部はわざと不敵な笑みを作って言いました。

「へっ…あいにくだが俺ァ…悪党の言う事にはいそうですかと傾ぐ趣味はないんでな。特に卑怯きわまりねえ手を使わなきゃ何も出来ないような奴の言う事なんざ、」

言葉を遮るように、ルパンさんの平手が警部の頬を何度も打ちました。

だまれ
だまれ
だまれ!

まるで取り付かれたように何度も何度も殴りつけるルパンさん。
その衝動はおそらく、恐怖に一番似ていたかもしれません。
警部が自分に対して向ける「憎悪」に、彼はどうしようもない恐怖と焦りを感じていました。
はやく、はやくこの男を完全に自分の足元に跪かせなくては。
そうでなければ自分が「負ける」ような錯覚に陥っていたのです。
警部の体から力が抜け、がくりと体が前のめりになりました。
荒い呼吸に肩を上下させ、目の前がチカチカする不快な状態に翻弄されていました。

---やべえ、頭ン中が霞がかったようにはっきりしねェ…

痛覚も感覚すらもどこかガラス越しに感じるかのようでした。

「あーあ、ひっでえ顔。だから言ったじゃん?素直にならないと俺、何するか分からないって」

ぐらつく頭で、長い時間をかけてようやく言葉の意味を理解する警部。
目は薄く開いているのですが視界は暗く、自分の顎を掴んで顔を持ち上げるルパンさんの顔すらも良く分かりません。
しかし、それでも気力を振り絞って目の前の敵をにらみ上げました。
そして、搾り出すように言いました。
何が目的だ、と。
警部には「あの日」の事や今行われている事に、何の意味があるのかまったく分かりません。
ルパンさんのことですから、やる事なす事必ず目的がある、そう思っていたのです。
その目的が、彼の「仕事」に関するものなのか、それとも別に思惑があるのか。
それだけは知っておきたいと思っていました。
再びにらみつけられ、ルパンさんは悔しそうに奥歯を強く噛み締めました。
またその目だ。
自分を蔑むような、責められるようなこの目。
どうしてアンタは、こんな目に合わされてもそんな強い意志を保ち続けられるんだ?
ああ、またあの焦燥感だ。
この目でにらまれるたびにどうしても心に焦燥感が生まれてしまう。
そんな葛藤を必死に頭の片隅に追いやり、ルパンさんは固まった笑顔で言いました。

「理由?そんなの決まってるじゃない。俺はアンタに勝ちたいの。アンタを徹底的にとっちめてもう二度と逆らえないようにしたいの」

だってもともと俺たちそんな関係じゃない。「敵同士」なんだから。
敵同士。その言葉に警部の心は大きく揺れ動きました。
分かっていたはずだった。そもそも刑事と怪盗という関係だったのだ。
下手すれば殺す殺されるがあって当たり前の立場関係なのだ。
でもその事実を、長年「好敵手」とみなしていた相手に改めて突きつけられてしまうと、なぜか警部の中に苦い思いが広がっていきました。
それは一体なぜなのか。
警部は一瞬自分の心に芽生えた思いを振り払うかのように唇を噛みました。
そうだ、所詮敵同士。
いつかこうなる事は分かっていた。
分かっていたはずじゃないか。
それなのに。
一方、自分で言った言葉に対して同じように動揺していた赤い人。
どうして自分はこの男を完全に屈服させてしまいたいのだろう。
いまさらながらその目的の理由を思い出そうとしていました。
警部に対するこの凶暴なまでの「渇き」はなんだろうとも思いました。
好敵手としての立場だけでは、いつの間にか足りなくなってしまっていた。
追って追われるというあの関係が大好きだったはずのに、それだけでは足りないのだ。
だからいっそ完全に勝とうと思った。
完全に警部に勝ち、優位の地位を不動にしようと思った。
そして、警部自身を全て、自分のものにしようと思っていた。
でも。
それだけが理由だったんだろうか。
ほかにもっと大切な事があった気がするのにそれが何かが思い出せない。
分からない苛立ちをぶつけるように、ルパンさんは警部のシャツを引っつかんで引きちぎりました。
いきなりの行動に思わず体を硬くする警部。
むき出しにされた胸を見て、「あの日」刻みつけたナイフの傷がほとんど見えなくなっている事にルパンさんはなぜか怒りを感じました。
まるで自分の所有の証を消されたかのように感じ、ああくっそ!となったわけです。
もう縦横無尽に傷つけてやればいいんじゃね、と不穏な事を思ってしまったルパンさん。
ナイフを取り出し、警部の首筋にぴたりとあてがいました。
ひやりとした感触に、さすがの警部も顔色を失います。

「もう一度、聞くよ」

ルパンさんは、ぞっとするような低い声で言いました。

「「あの日」みたいに、もう一度俺に屈してみる気はないかい?」

ナイフが軽くすべり、首筋に薄く切り傷が刻まれました。
血が滴る感触に身を振るわせつつも、それでも警部は無言のままルパンさんをにらみます。

「言いなよ。あの時みたいに。「何でもするから、許してくれ」って」

鋭い痛みが胸を走りました。
2度、3度、たて続けに。
そのたびに奥歯を噛み締めて痛みに耐える警部。
それでも声を上げる事はしませんでした。

---コイツの思い通りになってたまるものか。
---こんな方法で屈してなんかやるものか。
---こんな事でしか自分に対してぶつかってこれないような奴に、屈服など絶対に。

もはや意地と気力だけで戦っているかのようでした。
そして、その事を痛いほど理解しているルパンさん。
どうしてなんだ、と思いました。
どうしてもこの人は自分の思い通りになろうとしてくれない。
その事実がどうしても許せない。
許せない?-いや、違う、これは。
警部の体中に傷をつければ、まるで名前を彫ったかのように自分のものになると思った。
少なくとも「あの日」はそう信じて疑わなかった。
でも今は違う。
どんなに傷をつけたって、どんなに手ひどく痛めつけたって、この人は自分のものにならない。
その事実だけは、間違いのない真実。
焦燥感。
そのとき、凶悪な衝動が、彼の心を黒く染め上げました。
警部の体が、反射的にすくみあがりました。
あの時と同じだ、と思いました。
どっと全身から冷や汗が吹き出します。
その場に立つのは、人間の形をした1匹の獣。

「いっそ、アンタを殺しちまえば、全てにけりがつくのかも、な」

感情の伴わない声でルパンさんはつぶやきました。
警部が何か言おうと口を開きかけるのを待たず、獣はものすごい力で喉元を締め上げてきました。
思わず体を跳ねさせ、引きつった悲鳴を上げようとする警部。
のけぞった喉に容赦なく歯を立てる赤い人。
ぎりぎりと音を立て、鋭い犬歯が喉に食い込みます。
あ、あ、と言葉にならない声を上げる警部。
「あの日」の記憶と今の状況がシンクロし、言い様のない恐怖となって警部を襲いました。
怖い。
怖い。
殺される。
今度こそ自分はこの男に殺されると感じました。
痛みと恐怖で気が遠くなりそうでした。
しかし、それらの恐怖よりも警部の中にいる「痛み」がその存在を主張していました。
痛み。このちりちりとした胸の中の痛み。
ずっと人知れずうずいていた痛みがいっそう大きくなるのを警部は感じていました。

---ルパン、お前ェは…

吊られた腕が、二人分の重さを受けてギシギシときしみます。
一方、加害側のルパンさんもまた必死でした。
「あの日」みたいにこうやって喉に食いつき、あふれる血を舐めたところで状況が一向に好転しない。
同じ事をしているはずなのにどうしてうまくいかないんだろう。
ねえ、俺どうしたらいい?
どうしたらこの焦燥感を止められる?
止めてくれ、俺を。
このままだと本当に警部を殺してしまう。
その事実に改めて気がつき、ルパンさんは自分の行為を心の底から恐怖しました。
本当に俺は、こんな事がしたかったのか?
と、警部の口がかすかに動きました。

ルパン、と。

びくりと体を震わせ、ルパンさんの動きが止まりました。
無意識に見るのを避けていた、警部の顔へ視線をやりました。

---なあ、ルパン

警部は言葉を続けようとしました。
しかし、言いかけた言葉は喉の奥に張り付き、出てくる事はありませんでした。

---お前ェは、そんなにも俺が邪魔だったのか?

今、出来るなら一番聞きたかった事。
こんな、徹底的に痛めつけて屈服させたいくらいに、自分の存在は邪魔だったのか?
そんなに殴りつけて血だらけにしたいくらいに、俺を憎んでいたのか?
でも、いまさらそれを聞いてなんになる。
俺たちは敵同士。いつかこうなるって分かっていたじゃないか。
いつか命をかけて戦う事になるって、コイツと出会ったときから覚悟していた。
それが今日だった。ただそれだけじゃないか。
それなのに。

---だけど、それでも俺は、お前ェを

不意に、警部の顔がゆがみました。
まるで、泣き出しそうになるのをこらえるかのような、そんな顔。
ルパンさんは胸に、何かが深々とつきたてられたような衝撃を感じました。
にらまれたり、罵声を浴びさせられたときですらこんな衝撃はなかったのに。

---やめてくれ。
---そんな目で、俺をみないで。

考えるより手が先に動きました。
警部の首周りにぶら下がっていたネクタイを引きちぎり、無造作に目の周りにぐるぐると巻きつけました。
もうこれ以上、その目で見つめられる事に耐えられなかったから。
目隠しをされながら、警部はぼんやりと思いました。

---ああ、駄目なんだな。
---お前ェを見つめる事すらも、許されないんだな。

終わりだと思いました。
もう、自分の声は、思いはコイツに届かない。
その事実を目の当たりにし、警部は今度こそ本当に絶望を感じました。
今まで意地を張るかのようにルパンさんを見上げていた首から力が抜けました。
全身を覆っていた気迫が消えました。
それは、心が完全に折れて諦めを受け入れた瞬間でした。
ふさがれた視界の先で、思い出すのは過去の出来事でした。
ルパンさんを追う警部。その際巻き込まれた事件の数々。
たまに手を組んで共闘したり、なぜか同じ釜の飯を食ったり、助けあったり笑いあったり。
まるで走馬灯だなあと警部は思いました。
そして、こんなときですら自分の考える事はルパンのことかと思いました。
記憶の中のルパンさんは、いつだって屈託のない笑顔を向けていました。
思わず自嘲します。
これだけひどい目に合わされ、部下たちまで負傷させられ、自分だってこれから殺されようとしているのに。
それでも俺は、コイツのことばかり考えるのか。

「…馬鹿…だよな」

思わず口からぽろりと言葉がこぼれました。
ああ、とんだ大馬鹿野郎だ、俺は。
いつからか、ただの逮捕すべき相手だと思っていたコイツに対し、憎からぬ感情を持っている自分がいました。
コイツの考えていることなんか手に取るように分かると自負していたのも事実でした。
そして、同じように相手にも自分の思いは伝わると、心のどこかで思っていた。でも。
ふと、警部は頬に熱を感じました。
ああ、自分は今泣いているのだと理解しました。
涙はネクタイの隙間から鼻筋を伝って、とめどなく落ちていきます。
泣くほど悲しかったのだろうか。コイツに思いが伝わらない事が。
思いが伝わらねェことが、こんなにも辛いだなんて、まるで俺は、

---お前ェの事が、好きだったみてぇじゃねえか…

→なんか夢見た流血絵(横幅800px)

この、心の奥にちりちりとしていた思いはきっとこれだったんだろうなあと、今更のように思います。
刑事が盗人に恋するだなんて、笑い話も良いところだな。
でも、それでも俺はお前ェと出会えて…幸せだったんだと思う。
自分の頬に、自分とは違う体温を感じました。
ルパンさんの手が、自分の頬に触れているんだと理解します。
そのときが来たのだと、警部は覚悟をしました。
次に来るであろう、最期の衝撃を覚悟しました。
しかし、その衝撃は一向に訪れません。
いぶかしげに感じたその時、なにかやわらかいものが額に触れました。
予想外の事に、警部は面食らいます。
自分に触れたものがルパンさんの唇だという事に気がついたから。
ルパンさんは、目隠しされた後に目に見えて脱力した警部に心を激しくざわつかせていました。
そして、静かに涙を流した警部に対し、血の気が引く思いでいっぱいでした。
それは罪悪感と後悔が入り混じった感覚。
俺今まで何やってたんだろうという、急速に正気が戻ってくるかのような感覚でした。

---本当はこんな事がしたかったんじゃない
---アンタにこんな顔をさせたかったわけじゃない

何か、何とか声をかけようとするも、今更何を弁解しようも取り返しがつかない事は明白でした。
そして、彼は今になって初めて、一番やりたかった事を思い出しました。

---俺、本当はアンタに伝えたい事があったんだ

警部に触れたいと思いました。
涙を流す警部の頬に、そっと手をあてがいます。
殴りつけていたときには気がつかなかったのですが、手に伝わる体温があまりに温かい事に思わず胸が締め付けられました。
抱きしめたいと思いました。
しかし、見れば自分の手は警部の血で随分と赤く染まっていました。
自分にこれ以上警部に触れる資格はないように思い、その場に固まってしまいます。
それでも触れたいという思いが勝ち、ルパンさんの体が動きました。

---俺、アンタが好きだったんだ

傷に触れないように、慎重に額に唇を寄せました。
その感覚に、警部はふと顔を上げました。
ネクタイ越しに、自分に向けられた視線を感じます。
それは、まるで迷子の子犬が救いを求めるような、弱弱しい視線。
いままで自分を痛めつけていたはずの人物と、今目の前で頭をたれている人物が同一である事が信じられないくらい、それは弱弱しいものでした。
そして、その視線は美術館でルパンさんとであったときに彼が一瞬だけ見せた、泣き出しそうな子どもの顔をしていたときに良く似ていました。

「ルパン」

思わず声をかけます。
ルパンさんの体があからさまにびくりと震えたのが分かりました。
答えはありません。

「ルパン」

もう一度警部は、目の前の男の名を呼びました。
すぐ傍で、息を呑むような気配がしました。
その気配は、警部が一番良く知った、「いつもの」赤い人のものに間違いありませんでした。
その様が親にしかられた子どものようで、警部は思わず苦笑します。

「なんで、お前ェまで泣いてるんだ」

警部に言われ、ルパンさんはいつの間にか自分が泣いていた事に気がつきました。
あれ、どうして俺、とぼろぼろこぼれる涙に面食らう赤い人。

---まったく…泣きてェのはこっちだというのに

ふと、警部は思いました。
今思うと、ルパンさんの暴走はまるで子どもが自分の思いを伝えられずに大泣きしながら回りのものをぶん投げているのと大差なかったと。
たまに見せたあの泣き出しそうな顔は、「お願いだから気づいて、こっちを向いて」と必死に訴えるコイツの本心じゃなかったのかと。

「おい、目隠しはずせ、腕もだ」

警部は、ぐしぐしと涙をぬぐっているでっかい子どもに向かって言いました。

「何か言いたい事があったんだろ。聞いてやる」

突然の申し出に、ひっくり返った声で「と、とっつぁん?」と返す赤い人。
あからさまなうろたえ方に、自分の考えがあながち間違いではなかったと確信する警部。
大きなため息を付き、言葉を続けました。

「美術館のときからそうだった。あんな泣き出しそうな面してるから、何か言いたいんじゃねえかと思っていたんだが…こんなひでぇ目にあわせてくれやがって」

これでまた1週間は起き上がれねえよ、と遺憾の意を表明する警部。
しゅんと縮こまるルパンさんの姿が見えなくても容易に想像が付き、思わず喉の奥で笑いました。

「だから今聞いてやる。だがせめて目隠しぐらいはとってくれねェか。話聞いてやるってんだから…ちゃんと俺の目を見て話せ」

ルパンさんは目を大きく見開きました。

---アンタ、気づいてたんだ。

不意に心臓の鼓動が早まりました。
顔が真っ赤になり、その場から逃走したいくらいに恥ずかしい思いが襲ってきます。
まるで初恋の相手に告白するかのような、青臭い感情でした。
震える手でネクタイをはずすルパンさん。
急激に視界が開け、まぶしそうに瞬きを繰り返す警部。
ふと二人の視線が合いました。
同時に吹き出す警部。

「何だその顔」

無防備な笑顔を見せながら、警部は言いました。
お前ェ、なんかでっかい犬っころみたいな顔してるぞ、と。
実際ルパンさんは、潤んだ目をまん丸に見開いて、なんだかしかられた後許しを待っている犬みたいな顔をしていました。
先ほどまでの暗い色をしていた瞳に光が戻り、いつもどおりの間抜け面に戻っていました。
まるで麻疹だな、と警部は思いました。
あれだけ悪魔的な才能と頭脳を持った人間なのに、どうしてこういう部分ではどこまでも不器用なんだろうなあと。
ルパンさんは、自分に向けられた警部の笑顔を見て心の中の黒いものが晴れていくのを感じました。
同時にあれだけ自分を悩ましたひどい「渇き」も消えていくのを感じました。
ああ、なんだ。
俺はきっと、この人に笑いかけてもらいたかったんだ。
だから赤提灯で見た光景に嫉妬したんだろうな。
どんなに痛めつけても、屈服させようとしても得ることの出来なかった幸福感を、やっと今感じる事ができて再び涙腺が緩んでぼろぼろ泣き出します。

---まったく…本当にでっかい子どもだなお前ェはヨ。

呆れ顔でルパンさんがえぐえぐするのを眺める警部。
同時に自分が心の底から安堵している事に気がつきました。
それは、自分が殺されなかったという事よりもルパンさんに気持ちが通じたんじゃないかと自負できた事に対して感じた安堵感でした。
ひとしきりえぐえぐしたルパンさん、涙を拭いて警部の前に座りなおしました。

「あの、あの、とっつぁん!」

動揺に手足が生えたらこういう姿になるんじゃないかという勢いでてんぱるルパンさん。
何かを言おうと口をパクパクさせますが、なかなか言葉になって出てきません。
ひとしきり悶絶した後、ルパンさんが決死の覚悟で口にしたのは

「もう一度、キスしてもいい?」

でした。
はい?と今何を言ったかといぶかしげに聞き返す警部。
ルパンさんは、なんだかかわいそうなくらいにモジモジしながら言いました。
1回だけでいい。もう一度額にちゃんとキスさせてください、と。
あ!その他は絶対に何もしないから!!と訳のわからん弁解を続けるルパンさんに対し、なんだか良くわかんねえけどとりあえずこっちこいとルパンさんを呼ぶ警部。
おずおずと近づいたルパンさんにもっと顔寄せろと指示。
至近距離で見詰め合う事になった、しかめっ面の警部となんだか真っ赤な顔しているルパンさん。
警部は体を伸ばしてルパンさんに近づきました。
そしてその額にそっと唇を寄せます。
これでいいのか?と聞く警部。
完全にフリーズしてしまった赤い人。
耳まで赤くしてあ、とかう、とか謎のうめき声を上げつつ硬直しています。
まあ、これで良いんだよな、で、ルパン、本題は。
警部の声を遮って、いきなりルパンさんは警部に抱きつきました。
わ、なんだお前ェ!と焦る警部。
しばらくこのまま抱きつかせてくれーとでへでへしながらしがみついてるルパンさんに対し、本当にでっかい子どもだよなあとため息をつく警部。
で、結局何を伝えたかったんだ?の問いに対し、忘れちゃったーとか舐めた回答をするルパンさん。
でも、それで良いと思いました。
いつかこの思いはちゃんと伝えるから、今はこれで十分なんだと。
それよりも腕、吊られ続けてそろそろ限界なんだけどよォと抗議の意を聞き流しつつ、ルパンさんはそれからたっぷり3時間くらいは警部にしがみついたままでした。

*  *  *

それからルパンさんの「麻疹」は起こることはありませんでした。
普段どおりの日常に戻り、ルパンさんは予告状を出して盗みを働き、警部は部下を率いてルパンさんを追う。
ごく普通の日常生活に戻りました。
そして、ルパンさんも警部の周りに人がいること、部下たちに囲まれている警部の姿にたいして苛立ちを感じる事はなくなりました。
追う、追われる関係で良いと思いました。

---だって、俺を追っているときのアンタは、間違いなく俺だけのモンだからさ

今日も夜のしじまに怒号が響き渡ります。
赤い影は、よりいっそう軽やかに夜の街を駆けていきました。

----------------

長!!!
もう自分でもどうしようという勢いで長いのですが一つ勘弁してやってくださいトーホホ!
とまあ、妄想って膨らませていったらどこまでも膨張する良い例だなあと遠い目をしつつ、とりあえずルパンさんを正気に返す事前提で書けてよかったと自分に言い訳しております。
そして相変わらず絵は悲惨なわけですがもうね、どうしようね描いてて超楽しかった事を白状します。この外道。
そんなわけで1週間丸々使っての不吉大会だったわけですが、やってた本人もなんでこんな事になったのか良く分からんままに一応の終結。
とりあえず漫画をかきたいのでいろいろ悪さしたいと思います。ネタだけたまってすごい事になっているんだ泣
2009/06/07(Sun) 18:09:54 | BL50本ノック
Tittle: Name:

Profile

オブサワ
二次三次問わずオヤジジジィ大好物な困った人です。更に流血と被虐、縛りに萌える駄目な人です。実に注意。
●本拠地叫び穴
●連絡・感想・果たし状は1kangetu★cside.ne.jp(★を@に)
●話題の内容により注意を促すアイコンをくっつけたりします。各自自衛をお願いします。

流血やら縛りやら被虐やら不吉な話題注意


ホモやら乳やらわりとアレな不健全な話題注意

New Entries

Categories

Archives(513)