農民戦争脱穀の陣
※正しい脱穀スタイル
・農民御用達日光遮断布つきバイザー
・エプロンまたは割烹着
・出来るだけ長い腕袋
・できるだけ長い長靴、むしろ胴長
・首元に手拭い(トレードマーク)
と言うわけで農民戦争も後半戦です。
先の連休に強行しました。もう足元まさに沼という最悪な状態だったのですが、今日を逃せば台風の余波であとは雨続きと言う死刑執行みたいな現実に我々は出陣。
ちなみに今回の戦力は以下の様。
・司令塔 母 主に稲束を運ぶ運搬業務担当
・後方援護 祖母 飯作り(最重要)
・大将代理 ツレ 今回も当然のように召集された哀れな男。重機仕様に付き中条父から大将の代理を受け継がされる
・雑兵 オブサワ ごめん、ろくに寝てねぇ役立たず
さらに、今回の脱穀メニューは以下の様。
ミッション1 脱穀機をはぜかけ地点へ運搬せよ
ミッション2 脱穀機にはぜかけた稲束を突っ込んで米とわらを分離せよ
ミッション3 米を取ったわら束を一箇所にかき集め、やぐらを解体し、撤収せよ
ミッション4 わら束をトラックに積み込んで山の上の畑へ破棄せよ
ミッション5 取り終えた米が詰まった袋(30kg)の山を指定の倉庫へ運搬せよ
長くなるので残りは追記に放り込むことにする。
◆ミッション1:我が愛しのアルカディア
朝9時、ドオオンという爆裂音が辺り一帯に響き渡る。
脱穀機というものは、トラクターみたいな足回りと常にわらくずを噴出する噴射口が特徴的な、農民七つ道具の一つである。
その大きさはそれなりに大きく、エンジン部分も強力なので動くたびに公害ものの騒音を立てながら、悠然と戦地へ突き進んでゆく。
到着。そこはまさに2週間前我々が汗を汗で洗った農民の聖地であり戦場、田んぼ。
先日と違い、一気に冷え込んだ冷たい風が激励のように我々の軍を迎える。
脱穀の手順としては、乾かしておいた稲束を米とわらに分離させるために機械につっこんていくと言う大変明瞭な作業なのだが、この単純作業が我が軍にとって多大な難関であることは火を見るよりも明らかであった。
はぜかけのやぐらにぶッ刺さっているわら束を引き抜き、それを機械に突っ込むのは、稲束をやぐらにぶら下げていく作業よりも極めてしんどい。
ぎっちぎっちにぶっさして隙間のなくなった稲束の群れを、全力でかき分けて一束引っこ抜く。その時に束が崩壊するようなことがあってはならぬ。万歳のかっこうで1束5kg以上の束を2つ以上持ち上げ、そのまま腕をブルブルさせながら脱穀機の元へ運ぶ。そして一束ずつ丁重に機械に突っ込んでいく。以上が一般的な脱穀の過程である。
我々は、連れは重機の操縦、のこりは稲束運びと各自に任務を与え、各々戦場へ散った。
◆ミッション2:事件、発生
鼓膜が吹っ飛びそうな騒音にも慣れ、我々は淡々と稲束を機械に突っ込む作業に没頭していた。
なかなかのペースで戦は進行し、これならば昼までには作業終了となるかと我が軍に明るい兆しがみえ始めていたときのことである。
脱穀機の爆音に負けない悲鳴到来。
すわ何事ぞと駆けつけると母が腰を抜かしてその場に座り込んでいる。
ふと目を下方30度地点に向けるとなにやら動くものが。
蛇来襲である。
母は突如出没した蛇を縄と間違えてむんずとつかんだらしい。そりゃ怖いわ。
我が軍、士気大幅に低下。仕方ないので休憩を挟む。
秋とはいえ昼間はそれなりに気温が上がる。疲れもますます酷くなってきた。腕はダンベル運動を何時間も続けているのと大差ないのですでにパンパンになっているのが伺える。
はぜかけされた稲束の数はまだ無数にある。しかもその後もまだまだミッションが続くのだ。果してこの体力で戦い抜けるか。
◆ミッション3 頬に感じる、痛み
ごおおお…んと余韻を残しつつ脱穀機のエンジンが切られる。
辺りに恐ろしいほどの静けさが戻ってきた。
そうだ、我々は勝利した。たった今最後の稲束を脱穀機に突っ込んだのである。
バンザイ三唱をする間もなく、次のミッションクリアの指令が入る。
ミッション3のやぐら解体、である。
2週間にわたり、敵(稲束)を守り続け太陽の恵みを受けさせるために体を張って彼らを支えていた老兵、やぐら軍曹のその姿を丁重に解体する。
まず物干し台の長く太い棒を持ち上げ、その場に転がす。
次に足として支え続けた細かい棒たちを一束ずつ縄でくくり、田んぼを出て小高くなった位置に存在する彼らの住処、棒置き場に運搬する。
ちなみにこの棒置き場は夏は近所のにゃんこの寝床、冬はたまねぎと白菜と大根の保存置き場(冬は家の中より冷蔵庫のが温かい極寒の地なので野菜は外気で保存するのが一番長持ちする)として大活躍の優れものである。
その場にヒィコラと棒束を抱えて運び入れ、やぐらを兵度もが夢のあとのごとく跡形もなくその痕跡を消し終えた。
ああ、その作業が終わると冬が来る。
この頬に感じる熱いものは、季節の移ろいをしみじみと感じた我が涙か。
そんなわけはもちろんなく、とにかく今、頬が熱い、いや、痛い。
それもそのはず、現在我々の全身をくまなく覆っている脱穀機が吐き出した細かく粉砕されたわらの破片はガラスファイバーのようにちくちくと皮膚に食い込んで痛みを発生させている。
痛い、しかし顔をうっかりこすれば傷がついて風呂で悲鳴は必至と言う究極の状態。
願わくば一刻も早くシャワーでも浴びたい我が軍、しかし無常にも次の指令は下されたのであった。
◆ミッション4 さらば、わら束
前方から白い機体が接近してくる。
勉強の重圧から逃避した中条父が軽トラを走らせているのである。
我々は再び戦地に散り、点在するわら束の成れの果てを軽トラ周辺にかき集めることになる。
米を失って多少その体積を減らしたわら束だがそれでも重厚な存在感は衰えず、我が両腕にずっしりと爪を立てている。
疲れ果てた体と腰に鞭打って、わら共を軽トラに積み上げていく。
積み上げ作業は腕の筋肉を多大に使用する。軽く指先が痺れるほどだ。
最後のわら束を雄叫びと共にトラックに放り込み、その場にへたり込む我々一同。
中条父は軽トラを翻しながら颯爽とわら捨て場に向った。
だがこれで終わりではない。まだ微妙に残っているわら束が存在する。
彼らは来年のこの田んぼの土壌に貢献するために、この場らピラミッド上に積み上げられ、自然消滅を待つのである。
ひとつひとつ、思いをこめてわらを積む。気を抜くとピラミッドが崩れるという恐怖なのであくまで慎重に、だ。
そして最後の頂点となるわらを神々しく突き刺すと、どこからともなく拍手が沸き起こった。
終わった。この戦地で我々は生き延びたのだ。
生命に感謝しつつ、我々は最後のミッションへ挑むために白い兵団の元へ向ったのであった。
◆ミッション5 米、食べた後に
脱穀機には米をもぎ取った後自動に備え付けの米袋に蓄え、一定量に達するとブザーで知らせるという機能がある。
その耳障りな悲鳴を聞くたびに我々は重苦しい米袋を機械から外し、その場に転がして、そして再び新しい米袋を装着するという作業を強いられる。
そんな経過を経て、パンパンに詰まった白き悪魔、米袋はいまだ田んぼのいたるところに点在している。
これらを一定の場所にかき集めなければ今日の晩飯に新米が並ぶことはない。
限界を通り越え、すでに土色になっている我々は重い米袋を抱えもち、ずる、ずる、と半ば引きずるように回収地点へ運び入れる。
目がくらむ。太陽がまぶしい。まさにうお、まぶし、だ。タクアン和尚助けてとか脳内で叫びつつ米袋の抱擁に耐える。
30kgってうちの黒犬(ラブ)と同等の重さか、そりゃ重いわとか改めて魔の30kgを思い知る。ちなみに黒犬が遊んでほしくて私の足の上に尻をずしんと乗せおったとき、その重さにつま先がびくとも動かなかったことがある。
それはさておき米袋はついに一箇所に追い立てられた。後はお前らを精米して食うだけだ。我が軍も数々の試練の苦しみを思い出し、晩飯の白米に思いを寄せる。
中条父の軽トラが戻ってきた。そしてそのまま米袋どもを連行し、米置き場へ連れ去っていく。我々はその姿を見送ることなく、ただひたすら風呂場へ走った。つーかイタイイタイわらちくちくして超痛い、一刻も早く顔を洗いたいんじゃ!!!
そして待ちに待った晩飯。メインはもちろん新米である。
1年の思いをこめて、空腹を満たすために風情もへったくれもなく新米にかぶりつく我々であった。ちなみに今年の米の出来はなかなか良好みたい。暑い日が続いたから米も多く甘味もあるみたいだそうです。
と言う感じで怒涛の脱穀を行いました。いまだに腕筋肉痛ですどんだけ(泣)
秋は食欲のシーズンでもありますから、皆さんもおいしいご飯召し上がってください。新米は塩結びが大変オススメ。塩だけでいいんだ、さあ食え、かぶりつけ!ごま塩もいいぞ。
朝9時、ドオオンという爆裂音が辺り一帯に響き渡る。
脱穀機というものは、トラクターみたいな足回りと常にわらくずを噴出する噴射口が特徴的な、農民七つ道具の一つである。
その大きさはそれなりに大きく、エンジン部分も強力なので動くたびに公害ものの騒音を立てながら、悠然と戦地へ突き進んでゆく。
到着。そこはまさに2週間前我々が汗を汗で洗った農民の聖地であり戦場、田んぼ。
先日と違い、一気に冷え込んだ冷たい風が激励のように我々の軍を迎える。
脱穀の手順としては、乾かしておいた稲束を米とわらに分離させるために機械につっこんていくと言う大変明瞭な作業なのだが、この単純作業が我が軍にとって多大な難関であることは火を見るよりも明らかであった。
はぜかけのやぐらにぶッ刺さっているわら束を引き抜き、それを機械に突っ込むのは、稲束をやぐらにぶら下げていく作業よりも極めてしんどい。
ぎっちぎっちにぶっさして隙間のなくなった稲束の群れを、全力でかき分けて一束引っこ抜く。その時に束が崩壊するようなことがあってはならぬ。万歳のかっこうで1束5kg以上の束を2つ以上持ち上げ、そのまま腕をブルブルさせながら脱穀機の元へ運ぶ。そして一束ずつ丁重に機械に突っ込んでいく。以上が一般的な脱穀の過程である。
我々は、連れは重機の操縦、のこりは稲束運びと各自に任務を与え、各々戦場へ散った。
◆ミッション2:事件、発生
鼓膜が吹っ飛びそうな騒音にも慣れ、我々は淡々と稲束を機械に突っ込む作業に没頭していた。
なかなかのペースで戦は進行し、これならば昼までには作業終了となるかと我が軍に明るい兆しがみえ始めていたときのことである。
脱穀機の爆音に負けない悲鳴到来。
すわ何事ぞと駆けつけると母が腰を抜かしてその場に座り込んでいる。
ふと目を下方30度地点に向けるとなにやら動くものが。
蛇来襲である。
母は突如出没した蛇を縄と間違えてむんずとつかんだらしい。そりゃ怖いわ。
我が軍、士気大幅に低下。仕方ないので休憩を挟む。
秋とはいえ昼間はそれなりに気温が上がる。疲れもますます酷くなってきた。腕はダンベル運動を何時間も続けているのと大差ないのですでにパンパンになっているのが伺える。
はぜかけされた稲束の数はまだ無数にある。しかもその後もまだまだミッションが続くのだ。果してこの体力で戦い抜けるか。
◆ミッション3 頬に感じる、痛み
ごおおお…んと余韻を残しつつ脱穀機のエンジンが切られる。
辺りに恐ろしいほどの静けさが戻ってきた。
そうだ、我々は勝利した。たった今最後の稲束を脱穀機に突っ込んだのである。
バンザイ三唱をする間もなく、次のミッションクリアの指令が入る。
ミッション3のやぐら解体、である。
2週間にわたり、敵(稲束)を守り続け太陽の恵みを受けさせるために体を張って彼らを支えていた老兵、やぐら軍曹のその姿を丁重に解体する。
まず物干し台の長く太い棒を持ち上げ、その場に転がす。
次に足として支え続けた細かい棒たちを一束ずつ縄でくくり、田んぼを出て小高くなった位置に存在する彼らの住処、棒置き場に運搬する。
ちなみにこの棒置き場は夏は近所のにゃんこの寝床、冬はたまねぎと白菜と大根の保存置き場(冬は家の中より冷蔵庫のが温かい極寒の地なので野菜は外気で保存するのが一番長持ちする)として大活躍の優れものである。
その場にヒィコラと棒束を抱えて運び入れ、やぐらを兵度もが夢のあとのごとく跡形もなくその痕跡を消し終えた。
ああ、その作業が終わると冬が来る。
この頬に感じる熱いものは、季節の移ろいをしみじみと感じた我が涙か。
そんなわけはもちろんなく、とにかく今、頬が熱い、いや、痛い。
それもそのはず、現在我々の全身をくまなく覆っている脱穀機が吐き出した細かく粉砕されたわらの破片はガラスファイバーのようにちくちくと皮膚に食い込んで痛みを発生させている。
痛い、しかし顔をうっかりこすれば傷がついて風呂で悲鳴は必至と言う究極の状態。
願わくば一刻も早くシャワーでも浴びたい我が軍、しかし無常にも次の指令は下されたのであった。
◆ミッション4 さらば、わら束
前方から白い機体が接近してくる。
勉強の重圧から逃避した中条父が軽トラを走らせているのである。
我々は再び戦地に散り、点在するわら束の成れの果てを軽トラ周辺にかき集めることになる。
米を失って多少その体積を減らしたわら束だがそれでも重厚な存在感は衰えず、我が両腕にずっしりと爪を立てている。
疲れ果てた体と腰に鞭打って、わら共を軽トラに積み上げていく。
積み上げ作業は腕の筋肉を多大に使用する。軽く指先が痺れるほどだ。
最後のわら束を雄叫びと共にトラックに放り込み、その場にへたり込む我々一同。
中条父は軽トラを翻しながら颯爽とわら捨て場に向った。
だがこれで終わりではない。まだ微妙に残っているわら束が存在する。
彼らは来年のこの田んぼの土壌に貢献するために、この場らピラミッド上に積み上げられ、自然消滅を待つのである。
ひとつひとつ、思いをこめてわらを積む。気を抜くとピラミッドが崩れるという恐怖なのであくまで慎重に、だ。
そして最後の頂点となるわらを神々しく突き刺すと、どこからともなく拍手が沸き起こった。
終わった。この戦地で我々は生き延びたのだ。
生命に感謝しつつ、我々は最後のミッションへ挑むために白い兵団の元へ向ったのであった。
◆ミッション5 米、食べた後に
脱穀機には米をもぎ取った後自動に備え付けの米袋に蓄え、一定量に達するとブザーで知らせるという機能がある。
その耳障りな悲鳴を聞くたびに我々は重苦しい米袋を機械から外し、その場に転がして、そして再び新しい米袋を装着するという作業を強いられる。
そんな経過を経て、パンパンに詰まった白き悪魔、米袋はいまだ田んぼのいたるところに点在している。
これらを一定の場所にかき集めなければ今日の晩飯に新米が並ぶことはない。
限界を通り越え、すでに土色になっている我々は重い米袋を抱えもち、ずる、ずる、と半ば引きずるように回収地点へ運び入れる。
目がくらむ。太陽がまぶしい。まさにうお、まぶし、だ。タクアン和尚助けてとか脳内で叫びつつ米袋の抱擁に耐える。
30kgってうちの黒犬(ラブ)と同等の重さか、そりゃ重いわとか改めて魔の30kgを思い知る。ちなみに黒犬が遊んでほしくて私の足の上に尻をずしんと乗せおったとき、その重さにつま先がびくとも動かなかったことがある。
それはさておき米袋はついに一箇所に追い立てられた。後はお前らを精米して食うだけだ。我が軍も数々の試練の苦しみを思い出し、晩飯の白米に思いを寄せる。
中条父の軽トラが戻ってきた。そしてそのまま米袋どもを連行し、米置き場へ連れ去っていく。我々はその姿を見送ることなく、ただひたすら風呂場へ走った。つーかイタイイタイわらちくちくして超痛い、一刻も早く顔を洗いたいんじゃ!!!
そして待ちに待った晩飯。メインはもちろん新米である。
1年の思いをこめて、空腹を満たすために風情もへったくれもなく新米にかぶりつく我々であった。ちなみに今年の米の出来はなかなか良好みたい。暑い日が続いたから米も多く甘味もあるみたいだそうです。
と言う感じで怒涛の脱穀を行いました。いまだに腕筋肉痛ですどんだけ(泣)
秋は食欲のシーズンでもありますから、皆さんもおいしいご飯召し上がってください。新米は塩結びが大変オススメ。塩だけでいいんだ、さあ食え、かぶりつけ!ごま塩もいいぞ。
2007/10/12(Fri) 01:24:47 | 叫び
脱穀哀歌
>hisuiさん最近は稲刈りと脱穀はコンバインを使って一気に同時終了させてしまうことも多いのですが、やはり古来からの方法で天日に干したほうが甘くなるらしいのです。うまい米を食べるために年に数回全身筋肉痛になるのもなかなか有意義かもしれません。皆さんのお手元に少しでもおいといお米がいくといいなあと思いつつ、ゲッターとか歌って作業しておりました駄目な農民(笑) 塩結び、塩だけなのになんであんなに美味なんだろうって思います。是非ほかほかのご飯を塩できゅっと結んで、味噌汁などと共に召し上がってください。いまがお米一番おいしい時期ですよー!